山本由伸の初回KO劇はなぜ起きた? デビュー戦で悪夢…日本では見られなかった1球

パドレス戦に先発したドジャース・山本由伸【写真:Getty Images】
パドレス戦に先発したドジャース・山本由伸【写真:Getty Images】

山本由伸はメジャー初登板初先発で初回4安打5失点で降板

■パドレス 15ー11 ドジャース(日本時間21日・高尺スカイドーム)

 ドジャースの山本由伸投手が21日、韓国・ソウルの高尺スカイドームで行われたパドレス戦に先発し、初回4安打5失点で降板し、メジャー初黒星を喫した。制球が定まらず痛打を浴びる内容に、メジャー解説者の新井宏昌氏は「生命線であるスプリットの制球力がつかなかったことが全て」と分析した。

 まさかの光景に球場は静まり返った。先頭のボガーツに初球を弾き返され中前打を許すと、続くタティスJr.に死球を与え一、二塁のピンチを背負う。ここで、クロネンワースには右翼線への2点適時三塁打を浴び先制を許した。さらに、無死一、三塁からキム・ハソンに中犠飛を許し、3点目を失うと、その後も2本の適時打を浴び計5失点。2回のマウンドに山本の姿はなかった。

 投手4冠に輝いたオリックス時代には考えられない投球内容に新井氏は「メジャー初登板初先発の緊張感もあったと思う。本来、制球力の良い投手が苦しんだ。全ての球種で苦しんだが、スプリットを扱うことができなかった」と指摘した。初回に投じた43球の内、半分近くの20球がボール球。直球、カーブ、スプリットと軸になる球を見つけることができなかった。

 その中でも、新井氏が首を傾げたのはタティスJr.に死球を与えた場面だった。カウント2-2からの5球目。捕手・スミスは内角低めにスプリットを要求したが、ボールはすっぽ抜けるような形でタティスJr.の左ひじに直撃した。この1球が山本の投球を大きく狂わせたとみている。

由伸のスプリットは「本来はコースに入ってもファウルにでき、ボール球でも空振りを取れる球種」

「自在にスプリットを操ることができる山本にしては珍しい場面。本来はコースに入ってもファウルにでき、ボール球でも空振りを取れる球種。日本でもメジャーも一緒だが、落ちる球の精度がいいと空振りを取れる。バットに当たると何が起きるか分からない。思うような投球ができてこそ、ピッチングパターンは成立する。

 打者の立場とすれば、コントロールがよくて、決め球に鋭いフォーク、スプリットの“落ち球”を持っていかれ、追い込まれると苦しい。そうなると、早いカウントから打ちに行かなければいけない。それが、はっきりとしたボール球ならバットも振り出さない。甘いところに照準を合わせるだけでいいのですから」

 デーブ・ロバーツ監督は試合前に山本の球数について、90球をメドに考えていることを口にしていた。43球での初回降板に新井氏は「通常のシーズンではあまりない光景。ただ、韓国シリーズを終えれば試合間隔は空くのでブルペンはつぎ込みやすい。次の登板に向けた配慮もあったでしょう」と口にする。

 ほろ苦いデビュー戦となったが、シーズンは始まったばかり。初回KO劇が今後に与える影響は「現状、これでローテを外れることはない」と断言する。次回に向けては「スプリットを含めた変化球の精度を上げていければ問題ない。山本、自身もしっかり修正してくるでしょう」と期待を込めていた。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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