先発手薄は「今に始まったことではない」 怪我人続出も…燕OB期待の左腕「重要になる」

ヤクルト・嘉弥真新也【写真:小池義弘】
ヤクルト・嘉弥真新也【写真:小池義弘】

五十嵐亮太氏が復活を期待…「1番・塩見」の重要性

 昨季のリーグ5位から2年ぶりの優勝を目指すヤクルト。キャンプイン後に選手の故障や離脱が相次いでしまったが、オープン戦を12球団中3位で終えるなど好感触を得て、開幕を迎えられそうだ。

 今季のセ・リーグを見渡すと、総合的な戦力では昨季覇者の阪神が頭一つ抜けているという前評判が高い。では、ヤクルトが再びペナントレースを制するには、何がカギとなるのだろう。球団OBで野球評論家の五十嵐亮太氏が考える投打のポイントについて聞いた。

「僕が打線のキーとして挙げるのは塩見(泰隆)です。1番打者として、年間しっかり通してやってくれれば、攻撃面はそんなに心配ないのかなと思います」

 昨季は度重なる故障で51試合の出場にとどまったが、リーグ連覇を果たした2021、2022年には不動の1番打者として打線を牽引。2022年には140安打、16本塁打、24盗塁とキャリアハイを記録し、日本シリーズでは優秀選手にも輝いた。今春のオープン戦ではなかなか安打が生まれず、さらには左ふくらはぎを負傷するアクシデント。だが、終盤になって調子が上向き、バットから快音を響かせた。

「パワーもある方なので、試合開始と同時に一発の可能性もあるから『1番・塩見』は外せないですよね。正直なところ、村上(宗隆)はそんなに心配はいらない。確かに昨季は出遅れたけれど、今年はその反省を生かしてスタートするはず。となると、出塁して村上まで繋ぐという意味でも、やはり塩見が年間を通してプレーできるかの方が重要になってくるでしょう」

 さらに、昨季覇者の阪神の例を引き合いに、塩見に繋ぐ8番打者の重要性についても語った。

「昨年の阪神を見ても、近本(光司)、中野(拓夢)の1、2番に加え、8番の木浪(聖也)から繋がった時がムチャクチャ怖かった。投手は嫌ですよね、その流れ。8番からどれだけいい状態で塩見に繋げるかを考えた時、そこに入る長岡(秀樹)、武岡(龍世)の競争もカギになってくると思います」

 長岡と武岡は高卒5年目の同期。長岡は守備力に定評があるものの昨季は打率.227と苦しみ、複数のポジションを守れる武岡もまた打撃が課題となっている。

「打撃面で伸び悩んだ長岡ですが、今季は高津(臣吾)監督や打撃コーチと話をしながら新しいことに取り組んでいるそうです。何に取り組んでいるかは教えてもらえませんでした(笑)。基本は引っ張り型の打者で、僕が見た試合でも結構引っ張っていた。まだ、何に取り組んでいるかを見極める力が僕にはないので、開幕後にどう変化するのか楽しみですね」

手薄な先発陣をカバーする「中継ぎ陣」、新加入の嘉弥真に期待

 一方、投手陣のキーとして考えるのが「中継ぎ陣」だという。先発陣に離脱が相次ぎ、サイスニード投手、吉村貢司郎投手、高橋奎二投手のローテ入りは確実だが、それ以外は手薄だ。だが、「それは今に始まったことではない」と五十嵐氏は言う。

「リーグ連覇を果たした2021、22年はともに2桁勝利した投手がいなかった。誰かに頼るのではなく、今いる戦力の中でどう継投するか。となると、やはりヤクルトは中継ぎが重要になってくると思います。継投策であったり、代打の出し方も含めた戦術面であったり、そこの戦い方でしょうね」

 昨季守護神を務めた田口麗斗投手はコンディション不良で2軍調整を続けていたが、オープン戦終盤に1軍復帰。今季は石山泰稚投手、清水昇投手、木澤尚文投手に加え、新加入のホセ・エスパーダ投手も大きな戦力となりそうだ。中でも五十嵐氏が最も注目するのが、今季加入したベテラン左腕・嘉弥真新也投手だ。

 今季でプロ13年目の嘉弥真は、主に左の強打者に対するリリーフとして活躍。2017年から6年連続で50試合以上に登板するタフガイでもある。だが、昨季は23試合に登板し、防御率5.25と奮わず。戦力外通告を受けたが、ヤクルトとの契約を勝ち取った。

「ヤクルトが優勝を狙うとなると、阪神の左打者を抑えなければいけない。そこで嘉弥真の存在は相当重要になってくるんですよ。近本であったり、佐藤(輝明)であったり、阪神にはいい左打者が多い。ここぞ、という場面で嘉弥真が結果を出せば、終盤以降の戦いが安定するし、接戦をモノにできる可能性が出てきますから」

 五十嵐氏自身、2018年終了後にソフトバンクを戦力外となり、ヤクルトへ移籍した経験を持つ。ソフトバンクの黄金期をともに支えた仲間に、こんなエールを送ったという。

「『全部出し切れ!』と言いました。1回クビになった身なので、そのくらいの気持ちでやってもらいたい。『あと何年できるか分からないけど、毎年常に全部を出し切れ!』と声を掛けたら、力強く『やります!』って返ってきました(笑)。

 嘉弥真は完全にスライダー投手。ただ、ここ数年は自分のイメージ通りにスライダーが曲がらなかったそうです。それが心機一転、ヤクルトに来てからコーチのアドバイスなどもあり、自分が求めるスライダーに比較的近づいてきたと言っていました。面白さも真面目さもある人間的にもいいベテランなので、ブルペンの空気感も良くなると思います」

 阪神、広島、巨人に比べると「チーム全体の確実性に欠ける」と言い、五十嵐氏はヤクルトの今季順位は4位と予想する。「ただ、活躍する可能性がある選手は多いので、優勝する可能性もあると思います」。チームにとって可能性を発揮できるシーズンとなるのか。開幕はすぐそこまで迫っている。

【五十嵐亮太氏トークショー情報】
日米球界で活躍した五十嵐亮太氏が今季開幕直後の3月30日に東京・神宮球場近くでトークショーを開催する。トークショーでは、大のメジャー通で知られるフリーアナウンサーの山本萩子さんをMCに迎え、日米キャンプ取材のこぼれ話や今季のシーズン予想が披露されたり、質問タイムやプレゼント抽選会が実施される予定だ。

■五十嵐亮太トークショー
日時:2024年3月30日(土)17時開演
会場:PLAT SHIBUYA
その他のイベントの詳細は→ https://ryotaigarashi.peatix.com

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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