「ボールの2つぐらい内側を」土壇場で出た一打 吉田正尚が表現する“独特の比喩”【マイ・メジャー・ノート】

マリナーズ戦に出場したレッドソックス・吉田正尚【写真:Getty Images】
マリナーズ戦に出場したレッドソックス・吉田正尚【写真:Getty Images】

延長10回の打席で中前に適時打を放ち3試合連続安打を記録した

■マリナーズ 4ー3 (日本時間31日・シアトル)

 レッドソックスの吉田正尚外野手が30日(日本時間31日)、敵地・シアトルでのマリナーズ戦に「2番・DH」で出場し、延長10回の打席で中前に適時打を放ち3試合連続安打を記録した。

 1勝1敗で迎えた第3戦は、1-1のまま延長戦に突入した。走者を二塁に置くタイブレーク方式でレッドソックスは10回に1点を勝ち越すと、なおも2死一、二塁の得点好機を作り、吉田に5打席目が回った。

 対峙したのは5番手左腕のタイラー・サウセド。事前のデータはあえてインプットせず、昨年の対決で一ゴロに終わった反省を最大限に生かした。

 意識したのは、「手首をこねずボールを引っかけないようにすること」。体が開き気味のスイングで引っかければまた相手の術中にはまる。

 吉田は、カウント2-2から低めシンカーをコンパクトに振りぬき、中前に弾き返した。二塁走者が還り点差を2点に広げる3試合連続安打で今季初打点を挙げた。

 土壇場で出した一打には、独特の捉え方があった。

「ボール1つぶんだけじゃ足りないので、ボールの2つぐらい内側を見るぐらいでいきました」

 開幕から力説する「インサイドアウト」――グリップエンドを体の中心前あたりに引き出し、バットのヘッドが体の近くできれいに抜ける形でボールの内側を打つ――のスイングで、体の開きを止め左脇を締めて打ち抜くための強い意識を「ボール2つぶん」で喩えている。

 4打席目までは苦しんだ。

 昨季13勝を挙げた先発右腕のギルバートには空振り三振、大きな当たりの中飛、空振り三振と打ち取られ、8回の第4打席では2番手左腕のスパイアーに空振り三振に仕留められた。

 チームは10回に2点をリードしたが、その裏に3点を奪われサヨナラ負けとなった。開幕戦に勝利後の2連敗に吉田は「流れがちょっと雰囲気悪いですけど、また明日は明日で気持ちを切り替えて戦いたいと思います」と話し会見を終えた。

○著者プロフィール
木崎英夫(きざき・ひでお)
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続ける在米スポーツジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。シアトル在住。【マイ・メジャー・ノート】はファクトを曇りなく自由闊達につづる。観察と考察の断片が織りなす、木崎英夫の大リーグコラム。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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