太田椋が誓う“異名返上” 愛情込める指揮官からの「ミスターSOKKEN」封印へ

オリックス・太田椋【写真:北野正樹】
オリックス・太田椋【写真:北野正樹】

オリックス・太田、自らの新応援歌に「期待されていると感じる瞬間」

 心を奮い立たせてくれるメロディーと歌詞に、勇気をもらっている。オリックスの太田椋内野手は、今季から作られた新応援歌に背中を押されている。「しっかりと、僕が歩んできた野球人生を思い出させてくれて良い(曲)と思います」。今年初めて本拠地、京セラドームでの試合となった、3月3日のDeNAとのオープン戦に「1番・二塁」で先発出場。目を輝かせて新応援歌の感想を語った。

 2月の宮崎キャンプ終盤に、知人から送られてきたLINEの映像で新しい応援歌の完成を知った。「星宿りし心」との題で、太田が育った羽曳野市を表わす「南河内」と、天理高時代を過ごした奈良を象徴する「大和」を織り込んだ歌詞は、キャンプ中に23歳を迎えた太田が歩んだ道と重ね合うものだった。

「打席に入ると集中するので、なかなか聞いてはいられませんが、大きな声で声援してもらっていることはわかります。期待されていると感じる瞬間で、ありがたいことです。応援に応えて頑張りたいですね」

 感謝の気持ちはバットで表現してみせる。天理高から2018年ドラフト1位で入団。今季がプロ6年目。自慢の長打力を買われ、プロ3年目には開幕戦に「2番・二塁」でスタメン起用されるなど首脳陣の期待は大きかった。

“脱却”したい「ミスターSOKKEN」の愛称

 だが、これまでは怪我に苦しんだ5年間だった。プロ1年目は春季教育リーグで死球を受けて右尺骨を骨折し、2年目には走塁で相手野手と交錯して肋骨を骨折した。2023年は左手首を痛めて約3か月間戦列を離れ、復帰直後に同じ場所を痛めて手術を決断。そのままシーズンを終え、昨季は18試合出場にとどまった。

 再起を誓った今年の春季キャンプは手術後ということもあり、B組スタート。例年、紅白戦や練習試合で結果を残すも、その好調さをうまくシーズンにつなげることができなかったことから、キャンプ地のSOKKENスタジアムの名前を取って中嶋聡監督から「ミスターSOKKEN」と呼ばれたこともあったが、今年はその“イジリ”はなかった。

 ただ、出場した紅白戦1試合と、DeNA2軍、ロッテとの練習試合で計3安打。いずれも回の先頭打者としてのもので、切り込み隊長として存在感を示した。「手首の不安がなくバットを振ることができて、実戦に入っても(怪我をする)怖さがなくプレーできたことが1番よかったです」と声を弾ませた。

 3月15日のロッテとのオープン戦(ZOZOマリン)では、「1番・二塁」で出場。初回先頭で開幕投手に内定していた小島和哉投手から、初球を左翼席に運び、レギュラー獲りをアピールした。太田は2022年の日本シリーズ第7戦での史上初の「初回先頭打者初球本塁打」も記録している。

 初球から積極的に振っていくスタイルが持ち味で「これからも誰にも抜かれない記録ですね」と胸を張る。新応援歌に戦う心を奮い立たせ、チームに勢いを与える長打を放つ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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