MLBからオファーも選んだ日本ハム 「家族のことを」…台湾の至宝、変わらぬ感謝

日本ハムでプレーした王柏融【写真:荒川祐史】
日本ハムでプレーした王柏融【写真:荒川祐史】

王柏融が語る日本ハム入団の決め手

 日米の複数球団による“台湾の3冠王”争奪戦は、意外な球団の勝利で決着した。2018年オフ、台湾プロ野球Lamigo(現楽天)モンキーズからポスティングシステムを利用して海外進出を目指していた王柏融外野手は日本ハムと3年契約に合意。事前報道は一切なく、地元・台湾でも驚きの声が上がった。「家族のことを一番に考えてくれたんです」。今でも日本ハムへは忘れない。

 2024年、Lamigo時代の恩師でもある洪一中(ホン・イージョン)監督が率いる新興球団である台鋼ホークスに加入した。5年ぶりの台湾プロ野球。「洪監督の下でまた野球をやれて嬉しい気分です。戻ってきて本当に楽しくやってます」。表情はとても明るい。

 王は2015年に台湾プロ野球デビューしてから数々の記録を打ち立てた。同年は29試合の出場で打率.324、9本塁打を放つと、翌2016年リーグ歴代最高打率となる.414をマーク。さらに2017年は2年連続打率4割となる.407、31本塁打、101打点で3冠王に輝いた。

 3冠王は台湾プロ野球史上2人目、台湾人としては初。さらに、2年連続打率4割は史上初めての快挙だった。母国では敵なしだった“大王”が海外プロ野球に興味を示すと、NPB球団だけでなくメジャーリーグも視察に訪れた。「沢山の球団からオファーがあったのはありがたいことでした」。

事前報道一切なし…電撃入団も「一番話をしました」

 2017年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の壮行試合で、日本代表「侍ジャパン」と対戦。則本昂大投手(楽天)から豪快な一発を放つなど、以前からNPB戦士とも対戦があり、海外進出する際はNPBに行きたいという気持ちがあった。そんな中、王が選んだのは日本ハムだった。

 球団が情報管理を徹底していたため、“電撃入団”だったが、日本ハムとは「一番話をしました」と明かす。中でも家族の来日のフォローなど、異国の地で戦う王へのサポートが手厚かった。「嬉しかったですね。(家族へのフォローが)日本ハムで、日本のキャリアを築こうと思った一番の要因でした」。2020年に新型コロナウイルスが蔓延し、来日できない日々が続いたが、それでも球団はサポートし続けてくれた。

 日本ハムでは5年間で打率.235、15本塁打、97打点。決して納得いくものではなく、志半ばで台湾復帰を決断したが、「ものすごくいい経験でした。日本ハムへ行ってよかったと思っています」。今年31歳になる。母国復帰しても、日本への憧れと感謝は変わらない。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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