中日はなぜ首位を快走? 早くも現れた“中田翔効果”…OB絶賛「全体が変わってくる」

中日・中田翔【写真:小林靖】
中日・中田翔【写真:小林靖】

中日、巨人、西武で捕手として活躍した中尾孝義氏が中田翔に注目

 昨季まで2年連続最下位も、9日に8年ぶり(2891日ぶり)単独首位に立つなど見違えるような戦いを見せているのが中日だ。スタートダッシュを決めている理由の1つが、巨人から移籍し、4番で起用される中田翔内野手であることは間違いない。現役時代に中日、巨人、西武で捕手として活躍し、中日時代の1982年にMVPに輝いた野球評論家・中尾孝義氏が、中日好調の秘訣を分析した。

 もともと、投手力には不安がなかった。最下位に終わった昨季も、チーム防御率はリーグ2位の3.08。チーム打率.234、390得点、71本塁打の全てがリーグワーストの打線が低迷の要因だった。そこに今季から中田が加入し、打線の軸ができた。13日現在、13試合中、中田は12試合でスタメン4番を務め、打率.295、2本塁打、リーグ2位の10打点をマークしている。

 中日移籍後の中田は、持ち味の長打を放つだけではない。「日本ハムで4番を打っていた時とは違い、ここ数年の中田は無理に引っ張りにいかなくなりました。追い込まれてからは、右方向に軽打する技術を披露しています。中日の各打者が中田のそういうところを見習い、実践しようという意識が芽生えれば、チーム全体が変わってくると見ていました」と指摘する。

 まさに中田にならったかのような打撃を見せているのが、プロ2年目の田中幹也内野手だ。例えば、2日に本拠地・バンテリンドームで行われた巨人戦。1点ビハインドの7回2死一、三塁で第4打席を迎えた田中は、カウント0-1から巨人先発・山崎伊織投手が投じた内角低めのシュートを巧みに押っ付け、同点となる中前適時打を放った。

 3回の第2打席では内角のストレートを引っ張り三ゴロ、6回の第3打席でも内角のシュートに再び三ゴロに倒れていた。中尾氏は「第2、第3打席と同じ打撃をしていたら、第4打席も三ゴロか遊ゴロだったはずです。バットのヘッドを返すのを遅らせ、うまくヒットにしました。考えて野球をしている選手であることがうかがえた打席でした」と称えた。

今季の中田は「狙うべき場面で狙ってはいけない場面をわきまえている」

 現役時代、強打の捕手として鳴らした中尾氏は、右方向への打撃もお手の物だった。「前の肩(右打者の場合は左肩)を開かないことが、逆方向へ打つための鉄則です。それにグリップが体から離れると、バットが遠回りして右方向へ打つのが難しくなりますから、体の近くから離さないこと。そして、バットのヘッドを返すのを少し遅らせて右中間方向へ出すイメージで振ることです」と右打ちの秘訣を説明する。

「今年の中田は、常にホームランを打ちたい気持ちもあるとは思いますが、後ろの5番に細川(成也外野手)が控えていることもあって、狙うべき場面と狙ってはいけない場面をわきまえた打撃をしています。この姿勢が中日打線全体を変えていく可能性もあると思います」と評する。

 現役2位のNPB通算305本塁打を誇るスラッガーの変貌ぶりが、中日をどこまで押し上げるか楽しみだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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