号泣の19歳に「問題ないよ」 田嶋大樹が自身を“回想”…「こんな時もあった」

オリックス・田嶋大樹【写真:北野正樹】
オリックス・田嶋大樹【写真:北野正樹】

田嶋大樹、涙の齋藤響介に「気持ちはわかった」

 自然に体が動いた。オリックス・田嶋大樹投手は、3月17日のオープン戦(ヤクルト戦)で「涙の降板」をした高卒プロ2年目の齋藤響介投手に、そっと寄り添った。

「響ちゃんのことですか。大したことは言っていません。ベンチに戻って来るときには泣いていたので。100%、響介の気持ちにあてはまるかは分からないのですが、何となく気持ちはわかったので『問題ないよ』と声を掛けました」

 19歳右腕の涙腺が崩壊したのは、オープン戦初登板となった3月17日のヤクルト戦。先発・田嶋を継ぎ、2番手で6回から登板したが、村上に2ランを浴び、7回には西川に2ランを許して降板。3四球とボールを操ることができず、1回1/3を47球で3安打4失点となった。

 齋藤が「キャンプからあまり調子がよくなかったので、なんかいろいろ溜まっていたみたいで……」と振り返るように首脳陣へアピールすることができないままの、失意の降板だった。

19歳右腕の見て「俺もこんな時もあったんだなあ」

 齋藤の姿と、5年前の自分がオーバーラップしていた。「僕もそういう時期がありましたから。もう悔しくてずっと泣いてたんです。(プロ)2年目に何をやっても、どうしても勝てなくなってしまったんです。ほんとに悔しくて『1年間に何回泣くんだろう』と思うくらい泣きました」。

 田嶋は佐野日大高からJR東日本を経て、2017年ドラフト1位でオリックスに入団。プロ1年目の2018年に左肘を痛めるまで前半戦だけで6勝(3敗)を挙げ、自信を持って臨んだ2年目だったが、6、7、8月に1勝ずつ。飛躍できないまま、3勝4敗でシーズンを終えていた。

 だからこそ田嶋は後輩右腕に「ああいう子こそ、内に秘めたものがあると思いますし、泣くくらい本気で自分と向き合っている証拠なのかなというように、僕は捉えたんです」と言える。齋藤は「いろいろあったのでどんな言葉をかけてもらったのか、よく覚えていません」と振り返るのだが、田嶋は「ちょっとでも寄り添えたらと思っただけです。覚えている、覚えていないは別にして、少しでも寄り添って次にステップできたらと。(19歳と)めっちゃ若いんで、成長途中でこれからの子なんで」。結果も大事だが、成長していくための過程が大切だと伝えたかった。

「響ちゃんを見て『俺もこんな時もあったんだなあ』と、懐かしいなと思いました。(失敗も)良い経験でしかないですね」。着実にステップアップし続けている田嶋。昨季は故障などで6勝にとどまったが、7年目もチームの勝利のために腕を振る姿を見せ続ける。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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