杉澤龍の胸に残るT-岡田からの“金言” 豪州で思い出した教え…「変化球も見逃せる」

オリックス・杉澤龍【写真:北野正樹】
オリックス・杉澤龍【写真:北野正樹】

オリックス・杉澤龍「打席で変に考えなくなりましたね」

 守備の次は、打撃で魅せる。オリックスの杉澤龍外野手が、シンプルなバッティングでチームへの貢献を誓っている。「こういうピッチャーだからこう打とう、なんていうことはやめました。打席で変に考えなくなりましたね」。日焼けした顔を引き締め、目を輝かせた。

 東北高から東北福祉大を経て2022年ドラフト4位でオリックスに入団し、春季キャンプの打撃練習では柵越えを連発するなど長打力と広角に打ち分け、打撃力をアピール。プロ1年目はウエスタン・リーグで92試合に出場し、チームトップの38打点を記録するなど勝負強さを発揮した。

 2年目の今季、存在感を示したのは自信のある打撃ではなく守備だった。出場選手登録された翌日の1日ロッテ戦(ほっともっと神戸)。「8番・中堅」で先発起用され、初回2死満塁のピンチで、前方に飛んできた打球をダイビングキャッチするスーパープレーで、先発・田嶋大樹投手を守りで援護した。

 もちろん、打撃も向上している。新人年は「1軍の投手の速い球を強く弾き返せなかった」と“プロの壁”に直面したが、シーズン後に派遣された豪州ウインター・リーグでヒントをつかんだ。中盤戦まで外国人投手への対応に苦慮していたが、T-岡田外野手のアドバイスを思い出したのがきっかけだった。

「真っすぐに対する捉え方が課題で、良い当たりもあったのですが、ボールの下を振るなど自分のポイントの中でバットが振れてませんでした。真っすぐを狙って打ちにいって、変化球がきたら泳いでしまって……。そんな時、Tさんから教えていただいた『高めの真っすぐに目付けをしたらバットが落ちない。それをたたくイメージでいったら低めの変化球も見逃せる。真っすぐを打つのが課題なのに変化球も欲張っていたら、どちらも崩れてしまう。まず、1つをクリアしないと次に進めないよ』という言葉が浮かんできたんです」

T-岡田の「助言」を胸に打席へ

 T-岡田の助言を胸に打席に立つと、内角高めの直球にしっかりと踏み込み、上から叩いてライナー性の本塁打を放つことができたという。「それからはしっかりと『目付け』をするようになって、打つ前の準備から入れるようになりました」と意識の変化が好結果に結び付いた。

 今季は、シーズン開幕前の練習試合で自打球を右足に当てて出遅れた。ただ、4月12日の2軍戦で復帰し、24日からの5試合で16打数6安打(1本塁打)と打撃をアピールして1軍昇格を果たした。

「真っすぐがきたら自分のポイントで打つだけです。どれだけ速くても、真っすぐに合わせていたら打てます。ストライクゾーンはどんな投手でも一緒なんで。そう考えたら、ボールを追いかけなくなったんです」。シンプルにバットを振り、好結果を待つ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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