大谷&ダルが並んだ時の「空気は違った」 “伝説”の数分前…スタッフが忘れられない瞬間

WBCで3大会ぶりの世界一に輝いた侍ジャパン【写真:Getty Images】
WBCで3大会ぶりの世界一に輝いた侍ジャパン【写真:Getty Images】

鈴木優氏がインタビュー取材…お相手はWBCで侍Jを支えたルーク篠田さん

 オリックスと巨人で投手としてプレーし、2022年限りで現役を退いた鈴木優氏は現在米国留学中で、「パ・リーグ インサイト」のスタッフを務めている。鈴木氏の中学時代からの親友で、昨年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で野球日本代表「侍ジャパン」のコーディネーターを務めたルーク篠田さんに、改めて大会を振り返ってもらった。今回は後編。

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 鈴木優(以下、鈴木):大谷(翔平)選手、ダルビッシュ投手をはじめとしたMLBの選手が、NPB所属の選手たちに与えた影響についてはどう?

 ルーク篠田(以下、ルーク):アメリカ志向になった選手が増えたと思う。トレーニング方法、メジャー球団の一日のスケジュール、用具のこととか。今までの侍ジャパンの中で一番平均年齢が若かったから、情報が入ってきていない分も多少はあると思うけど……。ダルさんを見て育っている世代の選手も結構いて、向上心にもつながっていたと思う。

 鈴木:確か強化合宿中も、ダルビッシュ投手がトラックマンとかのデータの見方をNPBの選手に教えていたんだよね?

 ルーク:データに関しては「回転数はこうだったよ」とだけ言われてもわからないから、例えば「この回転数でこの角度で、これ以上曲がっているからこの球種になるんだよ」と事細かく教えているのが印象的だった。その時点で若手の選手にとってプラスになっているよね。

 鈴木:MLBとNPBでは、まだデータへの理解の差があると思うから、ダルビッシュ投手のようなMLBの第一線でプレーしている方が、直接NPBの選手に伝えるのはすごくいいことだよね。

 鈴木:今回のWBCでルークが一番映ったのは、メキシコ戦(準決勝)でサヨナラ打を打った村上宗隆選手に、山本由伸投手、佐々木朗希投手と一緒にスポーツドリンクをかけた時だと思う。裏話を聞かせてもらえますか?

 ルーク:アメリカのベンチには、基本的に水とスポーツドリンクの「ゲータレード」が置いてあるんだけど、やっぱり日本人選手はアメリカの甘いスポーツドリンクをあまり飲まなくて。だから、あのボトルがほぼ満杯な状態で残っていた。そして、グラウンドで村上選手のヒーローインタビューをやっている時、たまたま山本投手と佐々木投手がベンチの近くにいたんだよね。アメリカの文化として、サヨナラの時はぶっかけないと(笑)。

 鈴木:自信のある推測だけど、これはルークからの提案だよね?

 ルーク:2人には「いいんですか?」って言われた(笑)。この文化をアメリカのメディアは知っているから、ドリンクの周りに2人が来た時点で察したのか、カメラをもう向け始めて「ゲータレードかけやるでしょ」という雰囲気が出ていて。「2人でかけに行って!」と言ったら、「え、いいんですか? 大丈夫なんですか?」と。持ち上げようとしたらめちゃくちゃ重くて、これは3人で運ぶしかないと思って僕も行きました。

ブルペンで見届けた世界一…大谷&ダル揃い踏みで激変した“空気”

 鈴木:今後、国際大会の時にオファーがあったらどうする?

 ルーク:気持ちとしては、もちろん還元できるところはできる限りしたい。心の奥底では、トラウト選手との対戦で大谷さんが締めたというあの漫画みたいな終わり方はこれ以上ないなとも思っているけど(笑)。

 鈴木:WBCから1年経った今は何をしているの?

 ルーク:野球をメインに、自由にいろいろな仕事ができるのが理想的だなと思って自分の会社を設立した。日本にいる選手がメジャーでプレーする時に、間に入ってサポートすることで、選手が一番良い選択をできるように、あらゆる方面の橋渡し役になればいいなと思っている。

 鈴木:選手からしても、ルークくらいアメリカの知識がある人にアドバイスをもらえるのはありがたいことだね。

 ルーク:メジャー球団で働いて、MLB機構でも働いて、国際大会も経験している人はなかなかいないから、そういう部分で説得力があるかなと思ってやっている。今後、昨年のオフみたいに日本人選手が何人もメジャーに行くようなことが増えるだろうし、その前にアメリカの生活に慣れたいとか、メジャーの選手と一緒にトレーニングがしたいという選手もいると思う。こういったケースも含めて渡米前のサポートもしていきたいね。

 鈴木:ルークがこれまで現場で経験してきたことを、これからの選手に還元するという。野球界にとってもすごくいいことだね。

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 WBCが終わり、新たな道に進んでいるルークさん。彼のように、アメリカと日本のどちらの野球文化も熟知している人が、これからの野球界に貢献できることは多いだろう。今回のインタビューを通して、自分も負けないくらい日本の野球界に貢献できるように、しっかり勉強して発信していきたいと思った。今後、ルークさんには日米の野球文化の違いや、MLBとNPBにおけるデータの活用についても聞いていきたい。

(「パ・リーグ インサイト」鈴木優)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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