一時は打率.405…柳田&近藤に匹敵する“逸材24歳” ブレーク裏付ける「305→235」
開幕前に揃って支配下に昇格し、現在に至るまで1軍で活躍中
今季のソフトバンクでは、川村友斗外野手、仲田慶介内野手、緒方理貢外野手の3選手が、開幕前に「育成三銃士」と称されて話題を呼んだ。この3人は3月19日に揃って支配下昇格を果たし、シーズン開幕後も1軍に帯同してチームに新たな風を吹き込んでいる。(成績は5月25日の試合終了時点)
川村は仙台大から、2021年の育成ドラフト2位でプロ入り。3年目の今季開幕前に念願の支配下登録を勝ち取り、そのまま開幕1軍にも名を連ねた。自身初のスタメン出場を飾った4月6日の楽天戦でプロ初安打を記録すると、4月24日のロッテ戦ではトップバッターとしての起用に応え、3安打1打点で勝利の立役者となった。
その後も外野の主力として奮闘し、4月から5月にかけて11試合連続安打を記録。5月5日の時点で打率が.405に達するなど持ち前の打撃センスを存分に発揮し、柳田悠岐外野手、近藤健介外野手といったリーグを代表する好打者が居並ぶ、外野のポジション争いに堂々と加わっている。
2022年は打率.193に加えて39試合で36三振と、打撃の確実性に大きな課題を抱えていた。さらに、打率と出塁率の差を示す「IsoD」という指標も.061とやや低い水準であり、選球眼にも少なからず難があったことがうかがえる。昨季は打率が.260と大幅に向上し、出塁率.322、IsoD.072と選球眼も改善。それに加えて、二塁打が15本、三塁打が4本、本塁打が6本と長打の割合も多くなり、長打率も.492と十二分に優秀な水準へと到達している。
課題だった三振数も昨季は68試合で48個とやや減少し、三振率も2022年の.305から昨季には.235に改善。バッティングの粗さが徐々に解消されたことによって、持ち前の俊足を活かせるシーンが増えたことが、現在のブレークにつながっている側面もありそうだ。
打席に立つ機会は少ないものの、“打率10割”という完璧な数字を記録
仲田は地元の福岡大から、2021年の育成ドラフト14位でプロ入り。3年目の今季開幕前に支配下登録を勝ち取り、開幕1軍メンバーにも名を連ねた。開幕後は代走を中心に内野のバックアッパーもこなし、2打席に立って1安打1四球の打率1.000と打撃面でも完璧な成績を記録。今後も与えられたチャンスを生かし、さらに活躍の場を広げられるかに注目だ。
1年目は打率1割台と苦しんだ同期入団の川村とは異なり、仲田は同年に2軍で打率.268を記録し、早くから適応力の高さを発揮していた。その一方で、シーズンを通じて選んだ四球はわずか3個と少なく、IsoDも.016と極端に低い数字を記録していた。
昨季も打率.274と安定した打撃を披露し、前年はわずか1個だった盗塁も8個に増加。出塁率.307、IsoD.033と四球の少なさは前年と同様で、ボールをじっくり見るというよりは、好球必打でアベレージを残すタイプの選手であることが示されている。
その裏返しとして、三振率は2022年が.176、昨季が.112と、いずれも一定以上の水準に達している。三振を恐れずに深いカウントにも勝負を持ち込む川村とは異なり、仲田は三振も四球も少ない積極果敢なアプローチを持ち味としている点も興味深い要素だ。
2022年には2軍の盗塁王に輝き、1軍でも代走として出場を重ねている
緒方は駒沢大から、2020年の育成ドラフト5位でプロ入り。4年目の今季はオープン戦で14試合に出場して打率.333と好成績を残し、ついに支配下登録を勝ち取る。開幕後は抜群の脚力を武器に代走としての起用を重ねており、まだ1軍での盗塁こそ記録できていないものの、試合展開に応じて外野の守備固めとしても出場。試合終盤における貴重なピースとして、身体能力の高さを随所で発揮している。
2022年は出塁率.331、IsoD.072と、選球眼に関する指標がいずれも一定以上の水準に達しており、出塁の多さが盗塁の機会増加にもつながっていた。さらに、158打数で3本の三塁打を記録するなど、持ち前の脚力で先の塁を奪う機会が多かった点も特徴的だ。
昨季はIsoD.091と優れた選球眼こそ維持したものの、8本の安打のうち長打が二塁打1本のみで、打率.140に対して長打率.158と、長打力不足が顕在化。さらに、2022年の盗塁成功率は.773だったのに対し、昨季は盗塁成功率.571と盗塁の精度も低下していた。
今季も1軍での打率は.100と打撃面では苦しんでいるが、2022年のように打撃と盗塁の確実性を高めることができれば、より活躍の場を広げられる可能性はあるはず。同じく俊足を武器に育成からチームの主力に定着した周東佑京内野手のように、バッテリーに強く揺さぶりをかけられる存在となりたいところだ。
優れた打撃センスを発揮して1軍の舞台で着実に結果を残している川村、積極果敢な打撃スタイルが持ち味の仲田、2軍の盗塁王に輝くほどの脚力を有する緒方。3選手ともに俊足好打を持ち味とする打者ながら、各選手の細かな特性や長所はそれぞれ異なる、という点も、「育成三銃士」が持つ魅力の一つとなっている。
いち早く1軍の舞台でブレークを果たしつつある川村に続いて、仲田と緒方もより多くの出場機会をつかみ取り、これまで以上に存在感を発揮することができるか。話題性だけにとどまらない働きを見せている「育成三銃士」たちの活躍に、今後もぜひ注目してみてはいかがだろうか。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)