車と衝突…生死さまよったオリ21歳「奇跡です」 奮闘する兄とともにNPBで描く夢

オリックス・川瀬堅斗【写真:北野正樹】
オリックス・川瀬堅斗【写真:北野正樹】

オリックス、育成・川瀬堅斗が叶えたい夢

 夢の兄弟対決“実現”に向けて、オリックスの育成右腕・川瀬堅斗投手が奮闘を続けている。「プロ入りしてから1番良い状態でシーズンに臨めました」。人懐っこい笑顔で声を弾ませる。

 川瀬は大分商から2020年の育成ドラフト1位でオリックスに入団し、昨季はファームの先発ローテーションを守って、自己最多の16試合に登板した。1勝4敗、防御率3.61の成績だったが、収穫を胸に、オフにはみやざきフェニックス・リーグ、秋季高知キャンプ、台湾で行われたウインターリーグに参戦。昨年12月17日まで野球にまみれた。初めて怪我なくシーズンを過ごして痛感したのが「体力不足」だった。
 
「僕の悪い癖は、肩が開いてしまうところ。ゲームの後半になると疲れが出て球速が落ちて、楽に投げようとするため、肩も開いてしまいました」。そこで本格的に取り組んだのがウエートトレーニング。これまでも取り組んでいたが、シーズン中は先発ローテを守るため、体を追い込めない。

 みやざきフェニックス・リーグや秋季キャンプで取り組むと球速はアップし、体重も3~4キロ増量。強く、大きくなって臨んだウインターリーグでは、「NPBRED」の先発として3試合に登板し2勝を挙げ、防御率0.95でチームの準優勝に貢献した。

 台湾で過ごした期間では、NPBが準備してくれたジムでウエートトレーニングを継続。「外出するところもなく、トレーニングすることしかありませんでした」と笑うが、「入団して3年経ち、もう後がない」という思いが心を突き動かした。今ではウインターリーグ当時より2キロほど体重が増え、体も大きくなった。

5歳上の兄・晃との「兄弟対決」実現へ

 ソフトバンクの川瀬晃(ひかる)内野手は、5歳上の兄。昨季はキャリアハイの102試合に出場し、今季も代走や守備固めを中心に活躍している。兄弟の願いは、1軍での「兄弟対決」。ファームでの練習試合では1度対戦し、弟の堅斗が2打席を抑えた。

「晃は、ずっと上(1軍)にいるから、あとは僕だけなんですよ」と支配下選手登録に向け、強く意気込む。中学3年の時、自転車に乗っていると車にはねられ、生死をさまよった。両親が医師から「将来、スポーツができるかどころか、普通の生活を送ることを心配して下さい」と言われたほどの大怪我だったが、約1か月で動けるようになり、野球ができるまでに回復した。

「今、プロ(の世界)でプレーしていることが奇跡。この世界にいる限り、1日も無駄にしたくありません。早く兄弟で対決したいですね」。今季は2軍で8試合に登板して0勝2敗、防御率3.42。現実は甘くないが、夢の実現まで全力で腕を振り続ける。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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