巨人移籍の右腕がKO直後に口にした「センスない」 元新人王の“自信”が証明された躍動

ソフトバンクナインと談笑する巨人・高橋礼【写真:中戸川知世】
ソフトバンクナインと談笑する巨人・高橋礼【写真:中戸川知世】

高橋礼が30日のソフトバンク戦で“最短復帰”、古巣相手に先発へ

 出場選手登録を抹消されていた巨人の高橋礼投手が最短の10日で1軍に復帰し、古巣相手に立ちはだかる。30日のソフトバンク戦(東京ドーム)での先発が決まった。巨人に移籍した今季はここまで8試合に登板して2勝2敗、防御率2.23をマークしているサブマリン。新天地で躍動する姿を見て、約1年前に筆者へ語った「ある言葉」が思い出された。

「めちゃめちゃ(状態は)よかったんですよ。もしこれ(自分の投球)を『春先と一緒やん』と思う人がいたら、マジでセンスないなって思います」。去年の8月16日、京セラドームで行われたオリックス戦の試合前練習を終えた際に声をかけると、高橋礼はきっぱりと口にした。

 右腕が振り返ったのは4日前に先発した日本ハム戦だった。本拠地での登板は3回まで無失点と好投したが、4回に2点、5回には4点を失い、5回6失点でノックアウト。試合は0-9で負け、自らが敗戦投手となった一戦だった。

 ソフトバンクでプロ6年目を迎えた昨季は高橋礼にとって「勝負の1年」だった。12日の日本ハム戦は自身3か月ぶりの登板だったが、結果だけを見るとアピールは失敗に終わった。それでも「全然、苦しくないですよ」と言い切った。

「(状態が)悪くて打たれたら『やっぱりダメだ』ってなりますよ。(調子は)良かったし、勝負もどんどんできていた。自分がやりたいことはやれたんっすよ。(5回に)清宮に2ランを打たれさえしなければ、5回3失点。先発としては『なんちゃない』って感じだった」

「もっと次元が低いところで自分は苦しんでいた」

 正直に言えば虚勢にも取れる言葉だったし、筆者の受け止めも半信半疑だった。それでも右腕は言葉をつづけた。「別に自信があるというわけじゃなくて、自分の中で迷っていないというのが大きくて。もっと次元が低いところで自分は苦しんでいたので」。

 2年目の2019年には下手投げながら140キロを超える直球を武器に12勝を挙げて新人王を獲得した高橋礼。元ロッテの渡辺俊介氏や、西武や楽天、メジャーリーグでもプレーした牧田和久氏が紡いできた「下手投げの系譜」を継ぐ存在になると見られていた。しかし、2021年以降は球速が落ち込み、制球難にも苦しんだ。

 思うような投球ができない日々を越え、取り戻しつつあった本来の感覚があったのだろう。「まあ、任してくださいよ。1試合、2試合じゃ分からないですよ」。そう言ってこぶしを握ったが、昨季はその後、1試合の登板にとどまった。そして新天地に移った今季、その言葉がウソでなかったことは数字が示している。紆余曲折を経て、高橋礼は令和の時代にサブマリンの歴史を刻もうとしている。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)

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