再昇格の福永奨が挑む“サバイバル” 開幕3日で2軍降格も…生まれた意識「俺が刺す」

オリックス・福永奨【写真:北野正樹】
オリックス・福永奨【写真:北野正樹】

オリックス・福永奨、再昇格に「日々やるしかありません」

 武者修行がプレーの幅を広げた。オリックス・福永奨捕手が今オフに参加した豪州ウインターリーグでの収穫を胸に、成長を続けている。大卒3年目の24歳は「アピールしなくてはいけない立場なので。1日1日を無駄にせず、日々やるしかありません」。大阪・舞洲でひたむきに汗を流す。

 福永は横浜から国学院大に進学し、主将で4番を務めた。東都大学リーグで春秋連覇に貢献してMVPに輝き、2021年ドラフト3位でオリックスに入団した。即戦力とはいえ、入団時には若月健矢捕手、伏見寅威捕手がしのぎを削っていた。

 昨年からは伏見が国内フリーエージェント(FA)権を行使して移籍したものの、首位打者に輝いたこともある森友哉捕手が加わった。さらに、石川亮捕手もチームのムードメーカーとして存在感を示す。層の厚さがあり、福永の1軍出場は2年間で8試合にとどまる。

 経験がものをいうポジションで、地道に自分を磨くしかない。一朝一夕にレギュラーの座を勝ち取ることは至難の業だ。昨オフに横山楓投手、前佑囲斗投手、杉澤龍外野手とともに、派遣された豪州ウインターリーグは、福永にとって最善の場所だった。

 メルボルン・エイシズに参加し、練習から強く振ることが求められる打撃や、高めのストレート中心に勝負する配球は新鮮だった。「合わせる打撃はするなと指導を受けながら、間の取り方などのアドバイスも受けました。リード面では高めの速球を要求することでフォークや低めの変化球を生かす配球も学べました」と振り返る。

3日で終わった1軍生活が“リスタート”

 最も大きな収穫は、盗塁を阻止する意識の変化だった。「1試合で7、8人の投手を受けることもあり、コミュニケーション力やその投手の良さを引き出す対応力はつきました。ただ、牽制やクイックで投げてくれない投手が多く『それなら俺が刺してやる』という意識が生まれました」と明かす。

 元々、肩の強さに自信があった。プロ入り後に捕球時の構えや送球までの動作を工夫し、盗塁阻止率も上がったという。今春キャンプやオープン戦でも強肩を披露。1軍を担当する斎藤俊雄バッテリーコーチは「肩は強く投げる分には申し分ありませんでした。送球までのロスやプレーのキレの部分は改善されました」といい、オープン戦で登板した育成投手のピンチを盗塁で刺して盛り立てた場面では「自身のアピールとともに、若い投手を助け、チームも救ってくれました。盗塁がセーフなら死んでいた投手が、生き返りました」と高く評価した。

 プロ3年目今季、初めて開幕を1軍で迎えた。しかし、チーム事情もあり開幕カードを終えた翌日に出場選手登録を抹消され、1軍生活は3日で終わってしまった。斎藤コーチは「まだまだ成長してほしい。(2軍でのプレーも)プラスに考えてどう取り組んでいくか。現状では石川か福永しか(控え捕手は)いないのですから」とさらなる飛躍に期待を寄せる。

 福永は真剣な目で言う。「僕がやることは、いくら(投手がフォームを)盗まれても、出した走者は全部刺すこと、育成の子たちや若い投手にピッチングに集中してもらうこと。ストライクが入らない投手にどういった声掛けが大事なのかなど、考えるのは僕だけでいいんです」。2軍で鍛錬を積み、1日に再昇格。必要とされる時に備えて自分を磨く。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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