西武24歳はなぜ期待できる? 支配下登録につながった“習慣”…入団後に自覚した変化
育成6位入団の西武・奥村が支配下登録
西武がファームの若手の育成に力を入れている。象徴的な取り組みとして、勝敗に関わらず試合後にインタビューを行う「若獅子リフレクション」や、試合や練習で得たことをアプリに記して選手、コーチ、人財育成担当間で共有する「リフレクション」があり、日々の反省・内省の時間を大切にすることを徹底している。
そんな中、「リフレクション」の時間を大切にしているのが、奥村光一外野手だ。東海大静岡翔洋高から東海大、BCリーグ群馬を経て2023年ドラフト育成6位で入団。2軍で18試合に出場し、打率.219ながらも、三塁打2本、盗塁6と、足でかき回すプレーで貢献。支配下登録をされ、1軍デビューを果たした。
人財開発担当の伊藤悠一さんも、「(奥村選手は)リフレクションの大切さがわかっている選手」だと話す。それを本人に伝えると、「『リフレクション』が自分のためになっていることを、一番感じている選手だと思っています」と話し、こう続けた。
「振り返りのない練習や試合は意味がないと思うんですよ。振り返りをやった選手と振り返らなかった選手だったら、明らかに振り返った選手のほうが上達するな、というふうに思っています。振り返り自体は3軍でも2軍でもやっていることは一緒なのですが、3軍の時は試合前に目標設定をする時間があって、試合が終わった後にまた人財開発担当やコーチと振り返りの時間も作っていただいて、それはすごくいい環境だなと思います」
学生時代、独立リーグでは書き留めるということをしてこなかったため、西武入団後に初めてリフレクション、つまり振り返りをするようになった。いまでは夜の10分間程度をリフレクションアプリの入力に充てる。
大事にする“次戦の課題”「コントロールできる部分」
書く項目は、Good、Bad、Nextの3つ。そのなかで、奥村はNext(次戦の課題)に重きを置く。
「結果はコントロールできないですよね。でも、意識の部分はコントロールできることだと思うので、そういうコントロールできる部分にNextを置くことが多いですね。Nextは『こうしていく』と自分でしっかり書くことができれば、それだけで振り返りにもなるので、そのことについてまた次の日コーチと話します」
ある日、奥村は練習でできていることが、試合になるとうまくいかない悩みをリフレクションに書いた。それに対する木村文紀からは「なぜ練習ではできることが試合になるとできないのか、もう一度しっかりと振り返ってみること。明日、今日の守備について振り返りをします。試合になるとできない理由を明日までに答えられるように考えてきてください」とかえってきた。
奥村は当時を振り返る。「この時は僕のなかでもうまく言語化できていなかったので、このような返信をもらいました。もっと突き詰めろということですね。次の日木村さんと話し合いました。一番嬉しいのは、リフレクションで観点がずれてしまいそうなときに、コーチから『そういう意味じゃなくて、こういう意味で伝えたかったんだよ』って返信があること。次の日に『そういうことだったんですか』っていう会話にも繋がっていくのがいいですね。誰かに見てもらえるっていうのが大きいなって思います」
リフレクションでやりとりを繰り返すうちに、言語化に対する意識も変わってきたという。
「最初のうちは、感覚で物を話したりとか、説明ができないことも多かったのですが、文章化することを続けているうちに、たとえば先に結論から物事を話したりできるようになってきました」
敗戦後のインタビューも「何事もチャンス」
奥村は、今季、勝ち試合の「若獅子インタビュー」の経験はあるが、負け試合はない。敗戦後でもマイクを向けられることについてはどう考えているのか。
「経験する場を設けてくれているということが、すごく大きいなと思います。そういうのも自分のなかでチャンスだと思ってやるのか、それともただ何となくそういうインタビューを受けるのかは、また違うので。人財開発が行うマインドセットセミナーのなかでは、『可能性思考』と言われているのですが、何事もチャンスだと思って、その時間を過ごそう、と。それがライオンズの中で言われていることなんです」
人財開発担当が選手のマインドセットを助けていると聞いてはいたが、およそ半年でそれらの考えが選手単位で根付いていた。球団は、思考法や考え方についてセミナーを開いているという。選手たちも考え方やマインドが入団後に大きく変わっていることを自覚していた。
(「パ・リーグ インサイト」海老原悠)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)