山崎颯一郎、負傷離脱を“告白” 苦境の連続…地獄の日々も「受け入れるしかありません」

オリックス・山崎颯一郎【写真:小池義弘】
オリックス・山崎颯一郎【写真:小池義弘】

山崎颯一郎が苦しんだ「右肩鎖骨の奥と背中側の筋肉の肉離れ」

 復活のプロセスをつかみ、希望の光は差し込んできた。上半身のコンディション不良で1軍登録を抹消されてから、ちょうど2か月になった。オリックス・山崎颯一郎投手にようやく笑顔が戻ってきた。「やっとキャッチボールができるようになり、ブルペンにも入れるようになりました」。起伏の多い、8年目のシーズンを送っている。

 昨季はキャリアハイの53試合に登板。シーズンをほぼフルに戦い、リーグ3連覇に貢献した。今春キャンプではペース抑え気味の調整を続けシーズン開幕には間に合わせたが「正直に言って、ずっと自分が思うような球は投げることができていなかった」と振り返るほどの状態で、登板4試合後の4月14日に降格を告げられた。

 ファームでの再調整も苦しんだ。投球フォームを固め、打者と勝負をすることができるようになって「状態は上がってきていますし、真っすぐのデータ数値を見ても昨年とほぼ同じくらいに戻って来ています」というまでに時間はかかり、再登録されたのは5月22日のことだった。

 翌日の日本ハム戦(エスコンフィールド)から戦列復帰し、チームの連勝に貢献したものの復帰3戦目となった広島戦(マツダスタジアム)の直後に、上半身のコンディション不良で出場選手登録を抹消されてしまった。

 山崎によると「右肩鎖骨の奥と背中側の筋肉の肉離れ」だったという。怪我の重症度など示す「グレード」は低かったそうだが、故障の部位が山崎を苦しめることになった。

「息をしても患部に響くし、腕を下げるだけでも痛みがあって、歩くのもゆっくりという状態でした。普通は(肉離れを)やらないところなんですが、どこをどうかばったのか……。普通の(上半身の)肉離れなら走れますし、ある程度、動けますがちょっと違ったんです」

負傷離脱のタイミングが「悪すぎました」

 走るどころか、ゆっくり体をかがめてしか歩けない。もちろん、ウエートトレーニングもできなかった。約3週間はそのような状態だったといい、ムキムキだった上半身は練習着の上から見ても小さくなってしまった。視線を少し上げながら「あれだけウエートをやってきたのに、ビックリするくらい細くなって、見るからに胸板が薄くなってしまいました」と筋肉の落ちた胸をさすった。

 右肘のトミー・ジョン(TJ)手術を受けたことはあるが、体を動かせないような怪我は初めてだった。「起き上がる動作も痛いんです。本当に何もできんかったです。最悪です。地獄やったですね」。思い出すのも辛い。

 焦りもあった。「タイミングが悪すぎました。やっと下(2軍)から上がってきて、調子も上がってきて3試合目。『もう、どうでもええわ……』という気持ちにも、正直に言ってなりました」と吐露する。もちろん、自暴自棄になることはなかったが、やっとチームの勝利に貢献できる状態になった矢先の故障に、大きなショックを受けたのだった。

「ここまで来たら、受け入れるしかありません。元々あった筋肉なので、すぐには戻ると思いますが(投げられなかった期間の)ブランクを取り戻すのは、みなさんが思っているより時間はかかると思います。この時間を無駄にしたくはないと思っているので、パワーアップして戻りたいですね」

 いつにも増して柔和な表情で受け答えを見せた。「穏やかな表情になっていますね。張り詰めた空気の中にいなかったので。勝負勘を取り戻すのも難しいですね」。勝負の世界から離れて2か月。爽やかに“戦う顔”の復活が待ち遠しい。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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