捨てた“過去の自分” 宇田川優希が取り入れた「新たな思考」…逃れた悪循環
オリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】オリックス・宇田川優希が取り入れた「新たな思考」
あえて高い理想を掲げず、今の自分を受け入れる。オリックスの宇田川優希投手が、自らを追い込まない「新たな思考」で復活の道を歩んでいる。
「やっと自分らしさというか。真っすぐもしっかりと投げられるようになって(打者と)勝負ができるようになりました。2年前と比べたら程遠い感じはしますが、今できる自分の投球をするだけだと考えたら(気持ちが)超、楽になりました」
表情に明るさが戻ったのは、8月半ば。大阪・舞洲の球団施設でのことだった。宇田川は仙台大から2020年の育成ドラフト3位でオリックスに入団。プロ2年目の2022年、球威ある直球と鋭い落差のフォークで台頭して支配下選手登録されると、日本シリーズで4試合に登板するなどチームの26年ぶりの日本一に貢献。2023年にはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表にも選出された。
「よかった時の自分を求め過ぎていたんです」
悪循環から逃れることができたのは、8月に入ってからだった。きっかけは、ブルペンやマウンドでの成功体験ではなく、トレーニング担当の鈴川勝也トレーナーの一言だった。「フォームのことばかりを考えるのではなく、走ることに力を入れたら自然にフォームを気にせず投げられるようになるよ」。ピッチングのことばかりを考え過ぎる自分がいた。
「試合に投げられない時期や、投げ始めた頃は、よかった時の自分を求め過ぎていたんです。『こんなのじゃなかった……』みたいなことをずっと繰り返していました。例えば、150キロを出したりフォークを決めたりしても『あの時はもっと出ていた』『もっと速いフォークだったのに』と。でも、今、このくらいしか出ないのなら、この球速をコンスタントに出せばいいんだと考えたら、楽になったんです」
過去の自分と決別することができた。「今は今、前は前、という感じです。もっといいピッチングをしたいと思い過ぎて、理想が高くなっていました。もう理想を高くしないで、ただ今の自分ができることをやろうと思っています。ファームにいた時も1軍の試合は気になっていました。ほんとに1点差の試合が多くて『こういう場面で投げたい』とずっと思っていました。チャンスをもらったので、勝利に貢献したいです」。残り試合は少ないが、剛腕で打者をねじ伏せ、チームに貴重な勝利をもたらせるつもりだ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)