助っ人が驚いた日本の甲子園 「すごい」と語る“違い”…海外と異なるシステム

ソフトバンクのダリオ・サルディ【写真:竹村岳】
ソフトバンクのダリオ・サルディ【写真:竹村岳】

19歳のマルコ・シモン…甲子園を見て「勉強しながらプロを目指すのはすごい」

 今年も球児たちの夏が終わった。京都国際が春夏通じて初の優勝を飾った第106回全国高校野球選手権大会を、同世代の外国人選手も注目していた。経歴が全く違っても1球にかける気持ちは同じ。甲子園の熱戦を「興味を持って見ていました」と語るのが、ソフトバンクの育成選手であるマルコ・シモン外野手とダリオ・サルディ投手だ。

 シモンはドミニカ共和国出身、2004年9月18日生まれの19歳。2022年からソフトバンクの一員となり、少しずつ日本の文化に馴染もうとしている。夏の甲子園は興味津々で「テレビで見ていました。16歳から18歳の子どもたちで、すごくレベルが高いなと思いました。スピードのある野球というか、サインも多いですし細かいプレーが多くてすごいなと、毎年見ていても思います」と印象を語る。

 ソフトバンクに入団した2年前は、高校3年生にあたる17歳だった。100年以上の歴史がある甲子園だが、ドミニカには「部活」という概念がない。高校生にあたる年代の選手が、国のナンバーワンを決めるような大会も存在しないそうだ。「ドミニカでは高校に行きながら野球をするという文化がないんです。野球をやる時はやるという感じなので、勉強しながら野球もして、プロを目指すというのは驚きましたし、すごいなと思って見ています」と、尊敬の念を抱いてテレビを眺めていた。

 右投げ右打ちの外野手で、来日3年目を迎えたシモン。最初に苦労した文化は「日本人の練習に対する真面目なところ。そこが驚きました」と振り返る。指定された時間に集合して、試合前も決められた動きの中で調整していく日本のプロ野球。来日したばかりの時は「集合時間」があることにもビックリしたそうで「慣れるまでに時間がかかりましたね」と、少しずつ対応できるように経験を積んでいる。

ダリオ・サルディ投手はキューバ出身、苦労している食事面「うどんだけが唯一…」

 キューバ出身のサルディも2005年11月生まれで、高卒1年目にあたる世代だ。左投げ左打ちの投手で、今季からソフトバンクの一員となった18歳も、甲子園はテレビで見ていた。「日本ではドラフトという制度があるじゃないですか。彼らの場合はあの大会でいい選手だとアピールして、それでドラフトで選ばれる。僕らは育成選手としてプロに入って、そこから力をつけていく。やり方というか、プロに行くためにルートが違いますよね」。自分はプロで、画面越しの選手は高校球児。立場は少し違えど、1球にかける思いが伝わってきた。

「日本は各県の勝ち上がった代表がそこ(甲子園)で試合をすると聞いていますし、とてもレベルが高いです。キューバも同世代でトーナメントで勝ち上がっていく大会があるんですけど(全部で)36試合くらいしかない。日本のようにたくさん試合をしていくというよりは、練習がもっと多い感じです。キューバは日本ほど人口も多くないですし、何千校もあるわけではない。同じシステムでやることは無理だと思いますけど、1つのプレーが勝利に繋がると、大事なことなんだと思いながら見ていました」

 キューバにはドラフトという制度がないといい「キューバの場合はドラフトがなくて、たとえば福岡生まれの選手は福岡にあるチームに入るんです。基本的に自分が生まれた州のチームに入ります」と、“地元色”が強いそうだ。日本でプレーするという決断を下したのも「キューバは国内リーグが最高峰なんですけど、日本の1軍もレベルが高いですし(キューバから日本に行った)先人たちもいた。自分も高いレベルでやりたいと思ったからです」と理由を明かした。

 環境面は「全てですね。こういう施設は見たことがなかったし、ブルペンも日本の方がめちゃくちゃいいです」と語る。特に“違い”を挙げたのが食事。キューバではフォークとスプーンを使うことがほとんどだそうで「うどんだけが唯一、口に合わなかったです。ラーメンよりも太いし、舌触りがちょっと……」と苦笑いで明かしていた。10代の助っ人選手にとって、全てが新鮮な経験。力に変えて、一歩ずつ1軍のマウンドを目指す。

(竹村岳 / Gaku Takemura)

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