SNSで知った自らの放出「本当なんだ…」 獲得球団なし…33歳が忘れぬ屈辱

ダイヤモンドバックスのランダル・グリチック【写真:ロイター】
ダイヤモンドバックスのランダル・グリチック【写真:ロイター】

SNSで知った自らの放出…同僚と話し合い「これは本当のことなんだ…」

 他球団から求められなくても、プレーし続けることしか選択肢はなかった。ダイヤモンドバックスのランダル・グリチック外野手がエンゼルス時代の昨年経験した2度のウェーバー報道を振り返った。トレード期限直前に加入も打率1割台と苦しみ、チームは放出を検討。一方で最後まで移籍先は見つからず、残留となった。

「もっともエキサイティングな試合は意味のある9月の試合と10月なんだ」。1年ぶりに再会したグリチックの表情は生き生きとしていた。昨オフにダイヤモンドバックスと契約し、ここまで86試合で打率.274、6本塁打31打点。1日(同2日)の本拠地・ドジャースとの首位攻防戦で3安打1本塁打を放つなど、レギュラーとはいかずも怪我人続きのチームを支えている。

 メジャー11年目の昨季は悔しいシーズンを過ごした。大谷翔平投手を擁していたエンゼルスはトレード期限で買い手になり、打力を期待されたグリチックをロッキーズから獲得。しかし、チームは直後に7連敗。一気にプレーオフ争いから脱落すると、自身も8月は打率.165と低迷した。

 そして同年の8月29日(同30日)に“事件”は起こった。エンゼルスは、ルーカス・ジオリト投手、ハンター・レンフロー外野手ら大量6選手をウェーバーにかけたと米メディアが報じた。その中の一人がグリチックだった。フィラデルフィア遠征中の出来事だった。

SNSで知った自らの放出…同僚と話し合い「これは本当のことなんだ……」

「そうだね……覚えているよ。割とたくさんの選手がウェーバーにかけられていた。(情報が)リークされていたことを、SNSで僕らに知らせてくれた人がいてね。確か(ウェーバーにかけられた)6人くらいで話しをし始めたんだ。『これは本当のことなんだ……』って。その後、オフィスに呼ばれて、そこには監督にもいて、(ペリー・ミナシアン)GMと話し合って、そこで全ての説明を受けたんだ」

 チームは事実上の“白旗宣言”。さらに他の5人はプレーオフを目指す他球団に移籍したが、グリチックのみ獲得球団がなかった。さらに同年9月6日(同7日)にも2度目のウェーバーにかけられたと報道。同日にサヨナラ打を放ったが「つらいことだ」と笑顔はなかった。

 プレーオフという目標を失い、自身も他球団から求められない屈辱を受けたが、それでも腐ることはなかった。「明らかにうまくいっていなかったけど、強い気持ちで最後までやり遂げようと努力し続けたんだ」。9月は打率.269、4本塁打、OPS.797と持ち直し、オフにはダイヤモンドバックスと1年200万ドル(約2億9200万円)での契約にこぎつけた。

 ダイヤモンドバックスは3日(同4日)を終えてドジャースと6ゲーム差の3位。ワイルドカード進出圏内にいる。「(去年の経験から)学ぶことができる。精神的、肉体的に何が悪かったのかを理解し、調整することもできる。願わくば、この先もしそういう(苦しい)方向に進み始めたときに、そこから抜け出せられるようになっていればいいね」。腐らずにプレーした結果が今に生き、昨年とは違う“ヒリヒリする9月”を過ごしている。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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