宮城大弥が語る「野球の醍醐味」 パリ五輪で実感した“違い”…土まみれのユニホーム

オリックス・宮城大弥【写真:北野正樹】
オリックス・宮城大弥【写真:北野正樹】

オリックス・宮城大弥「室内競技と違い、野球はユニホームが土まみれになります」

 パリ五輪ではバスケットボールやバレーボール、卓球、バドミントン、フェンシングなどの熱戦がテレビを通してお茶の間を沸かせた。そんな喧騒を横目に、オリックス・宮城大弥投手は泥にまみれ、汗臭さのする野球の魅力に取りつかれている。

「スポーツには泥臭さや、汗臭さがついてきますが、ユニホームが汚れることの少ない室内競技と違い、野球はユニホームが土まみれになります。それでも僕は野球が楽しいんです」。野球の魅力を知ってもらおうと、宮城がちょっぴり気色ばんだのは、夏のある日だった。

 1936年に東京巨人や大阪タイガース、阪急など7球団で発足した日本のプロ野球。90年近い歴史を誇り、今も国民的関心を集める代表的なスポーツであり続ける。ただ、少子化で競技人口が減少しつつあるなかで、バスケットボールやバレーボールなどスマートな印象がある室内競技の人気が高いのも事実だ。

 パリ五輪では、バレーボール男子の日本代表が準々決勝のイタリア戦でフルセットの末に敗れ、48年ぶりの4強入りを逃したものの、中継したNHK総合の平均視聴率が世帯23.1%(関東地区、ビデオリサーチ社調べ)を記録。また、48年ぶりに自力で五輪出場を果たしたバスケットボール男子も、八村塁選手(レイカーズ)らスター選手の活躍で大きな注目を集めた。

 そんな中で、宮城は「(アマチュア時代は)うまくいかなかった時や、結果が出なかった時に『辞めたい』と思ったことはもちろんありますが、自分がやっていて楽しいから続けてきました。チームプレーも野球のいいところですが、選手個々が楽しくプレーした結果がつながったところを第三者が客観的に見てそう感じるのかなという思いもあります」と、個人プレーが結集してチームの総合力を発揮する野球の魅力を語る。

プロの世界は「真剣勝負なのでいつも楽しいばかりではいられません」

「何年後かに『あの時代のエースは』と言われたい。今は『裏エース』と呼ばれたいですね」とは開幕投手を任されるようになった後の宮城の言葉だが、先頭に立ってチームを引っ張るのではなく、一人の選手として野球を楽しんで結果を出すことでチームに貢献したいという思いが込められている。

 もちろん、プロの世界は楽しんでばかりではいられない。「プロになって辞めたいと思ったことはありませんが、真剣勝負なのでいつも楽しいばかりではないです。高校生の時とは、背負っているものが違います。高校生なら負けて試合や大会が終わっても『楽しかったね』と言えますが、今は負けは負けですし、どうやって気持ちを切り替えて次を頑張るかということを何年も通してやっていかなくてはならないので、難しいところはあります」。気持ちを吐露する。

 主力選手としての自覚を持ちつつ、野球を楽しむ原点を見失わずボールに魂を込める。マウンドで気負わず投げ込む宮城の魅力の根源はこんなところにある。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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