逸材25歳が挑む“高い壁” ファームで1試合6補殺の強肩も…ライバルは森、若月

オリックス・福永奨(左)と曽谷龍平【写真:栗木一考】
オリックス・福永奨(左)と曽谷龍平【写真:栗木一考】

オリックス・福永奨、異国で学んだ「協力してくれなくても、盗塁は俺が刺す」

 投手を助け、チームを勝たせる。オリックスの福永奨捕手がファームで強肩を発揮し、チームを救っている。「(盗塁は)刺して当たり前だと思っています。野手がゴロをさばくのと同じです。だから、刺して『ヨッシャー』とは思っていません」。再昇格後も、投手陣を懸命にリードし、ゲームを必死に組み立てている。

 まさかの記録を作った。8月4日に杉本商事BS舞洲で行われたウエスタン・リーグの阪神戦で、福永は阪神が企画した盗塁6つ全てをアウトにした。NPBによると、ウエスタン・リーグで1試合に6つの盗塁を刺したチームは、1965年6月15日に西宮球場で行われた阪急(現オリックス)-南海戦(現ソフトバンク)で阪急が記録して以来、59年ぶりのこと。捕手側の記録が残っていないため何人の捕手で達成したものかはわからないが、福永は59年ぶりの快挙を1人で成し遂げた。

 福永は、横浜高で1年春からベンチ入りし、主将として出場した3年夏の甲子園では3ランを放った。国学院大4年では主将で4番として、東都大学リーグでチーム初の春秋連覇に貢献しMVPに輝き、2021年のドラフト3位でオリックスに入団した。

 捕球してから二塁に到達するまでの時間を示す「ポップタイム」は1秒8台と強肩を誇る。ただ、森友哉捕手に若月健矢捕手、石川亮捕手と1軍捕手陣の“高い壁”を越えることは至難の業となる。

「構えなどアマチュア時代と全く違ってやりにくく、正直に言ってちょっと無理かなという時期もありました」と吐露する福永の転機は、2023年シーズン終了後に派遣された豪州ウインター・リーグだった。

 走者を出してもけん制やクイックなどをして盗塁阻止にあまり協力してくれない外国人投手を相手に「協力してくれなくても、盗塁は俺が刺す」と意識を大きく変えた。1軍昇格時にアドバイスを受けていた斎藤俊雄バッテリーコーチの「来季は3年目になるんだから、何かをつかんで自分を変えてこないとダメだ」という厳しい指摘も心に響いた。

オリックス・福永奨【写真:北野正樹】
オリックス・福永奨【写真:北野正樹】

盗塁阻止は「相手チームにプレッシャーを与えることができます」

 8月4日の阪神戦では、4回2死一塁から豊田寛外野手、6回1死一塁で遠藤成内野手、7回1死一塁で高濱祐仁外野手と2死一塁で代走の井坪陽生外野手、8回2死一塁で福島圭音外野手、9回2死一塁で再び井坪を、それぞれ二塁で刺した。1試合で6個の盗塁阻止に自信が芽生えた。
 
「向こう(阪神)も『いつセーフになるんだろう』という感じで走ってきていると思います。だから、当たり前に刺しました。元々、投げることには自信がありましたが、3年間、いろんなことを教わってきた小さいことの積み重ねがいい方向に向かっている感じです。地道にやってきたことでバランスよく送球できるようになり、いい結果につながったと思います。そこはやはり、無駄ではなかったと」
 
 2軍で指導する山崎勝己バッテリーコーチは「スローイングは、上の2人(森、若月)と比べても遜色はありません。勝負はできると思います」と高い評価を与える。
 
 福永は堂々と胸を張る。「盗塁阻止は1つ(アウトを)取っただけでも流れがすごく変わるプレーなんです。投手のリズムもよくなるし、相手チームにはプレッシャーを与えることができます。そこは捕手の役目だと思っています」。存在感を示す日々を続けるしかない。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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