描いたプロ生活とは「全然、違った」 黒子に徹した10年間…戦った日々の“葛藤”

オリックス・小田裕也【写真:北野正樹】
オリックス・小田裕也【写真:北野正樹】

現役引退のオリックス・小田裕也「10年間、よくやれたなという気持ちもあります」

 ハツラツと描いた10年前の夢を、素直な気持ちで振り返った。今季限りでの現役引退を表明しているオリックス・小田裕也外野手が、しみじみと言葉を前に出した。

「10年間、よくやれたなという気持ちもあります。即戦力で働かないと……の年齢(25歳)でプロの世界に入ったので。いつも自分で生きる道を探しながら、葛藤とも戦いながら……。だから10年の積み重ねになったのかなと思います」

 小田は九州学院高から東洋大、日本生命を経て2014年ドラフト8位でオリックスに入団。持ち味の俊足巧打を生かし、新人年の2015年は31試合に出場して打率.326を記録した。入団4年目の2018年には90試合に出場して打率.287。着実に出場機会を増やした。

 転機を迎えたのは2021年だった。主に吉田正尚外野手や杉本裕太郎外野手の代走や守備固めとして起用され、自己最多の101試合に出場。打席機会は18度のみで“職人の道”へ進み、悲願の25年ぶり優勝に貢献した。

 日本一に輝いた2022年は72試合に出場。昨季は77試合に出場し、打率.290を記録していた。今季はここまで19試合の出場にとどまり“引き際”を意識。決断を下し、10年間のプロ野球生活に幕を下ろした。

「いろんな重圧、葛藤はありました。毎日、戦ってきた」

「あっという間だったけど、振り返れば長かったですね。まだ実感がなく、終わった感じはしません。少しだけ野球のことを考える時間は減りましたね。技術のことや結果など……。だから、変な力みがなくなってきたのかもしれません。イメージ通りに体が動いていますね」

 夏頃には「引退」の2文字がうっすらと浮かんでいた。「2軍の試合に出て『楽しい感覚』がありました。楽しいの意味合いが変わった。結果が出て楽しいというものではなくて……。プレッシャーの部分ですね。心から楽しめるようになりました」。渋みを増した笑顔が光った。22日に予定されていた2軍戦が雨天中止になり、本拠地最終戦となる24日西武戦(京セラドーム)で、最後の勇姿を見せる。

「思い描いていた10年ではなかったですね。もちろん、スーパースターになりたかった。なるつもりで入ってきた。(2015年は)外野手も固定されていたけど、そこに割って入りたい。(年俸)1億円に到達したい。野望というか……当然、そんな思いはありましたよ。全然、違った野球人生でしたけどね」

 プロフェッショナルに生きた。「いろんな重圧、葛藤はありました。毎日、戦ってきた。でも、役割を全うできたのは誇らしいのかな……。3連覇がなかったら引退を決意していなかったかもしれないです。それぐらいの経験をさせてもらいました」。颯爽と駆け抜けるプリンスを、誰も忘れはしない。

(真柴健 / Ken Mashiba)

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