“涙”の巨人19歳…まさかのミスは「必要だった」 恩師が説いてきた失敗後の「姿勢」

巨人・浅野翔吾【写真:加治屋友輝】
巨人・浅野翔吾【写真:加治屋友輝】

巨人・浅野翔吾を語る高松商時代の恩師・長尾健司監督

 巨人の2年目・浅野翔吾外野手が21日の広島戦(マツダ)で手痛いミスを犯した。右翼の守備で打球を後逸し、逆転に繋がった。さらに9回2死の打席で三振。ベンチで涙を流した。そんな19歳を温かな眼差しで見守っているのが高松商の恩師・長尾健司監督だ。

 悪夢が起きたのは2点リードの8回2死二、三塁の場面だった。小園の右前適時打に対して、浅野は猛チャージをかけたが後逸。2者が生還し、同点に追いつかれた。さらに末包が勝ち越しの適時打。広島が1点リードを奪った。9回の攻撃で、浅野は2死から打席に立ったが空振り三振。巨人が敗れた。

 バットが空を切り三振に倒れた瞬間、浅野は片膝をつき、その場で動けなくなった。先輩たちに背中をさすられながら三塁ベンチに戻ったが、タオルで押さえられた19歳の目は、涙で赤くなっていた。

「すぐにちょっとな、調子に乗ってしまうところがあるから。成長するためには必要なこと(失敗)だったんじゃないんかな」。そう語るのが、高松商で浅野を3年間指導した長尾監督。試合後の浅野の行動に「話しとってよかった」と感じたことがあるという。

節目でかかってくる電話「もうこっちはいいからって…」

 失敗した時こそ気持ちを律して、礼儀正しくいるように常々説いてきた。その心掛けはグラウンドの中だけでなく、ユニホームを脱いだ時や私生活においても同様だ。2号先制ソロを含む4安打と躍動した8月24日の中日戦(東京ドーム)。活躍の要因について「2本目のヒットを打ったあとにトイレでトイレットペーパーを拾えたので、打てたんじゃないかなと思います」とお立ち台で語ったのも、長尾監督の“徳を積む”という教えに基づいたものだ。

「松井秀喜さんとか稲葉篤紀さんは、(際どい球を)審判にストライクと言われて三振してもそのまま帰って、次の日もその審判に『おはようございます』と必ず挨拶するらしい。そういうことを何度も言っとるから。だから、(浅野も)審判に対して感情を出さんやろ。それが『浅野は礼儀正しい』って話題になっとるみたいやしな」と長尾監督は語る。

 さらに「あのエラーのあと、決勝打を打った末包も高松商業のOBだからね。先輩のお膳立てができたんやから。そう思うようにしないと。末包も負けず嫌いで、高校時代はなんとしてでも優勝、1番にこだわる子だったから、先輩として絶対に勝ちたいと思っとるよ。俺としてはどっちも活躍しとって、嬉しいよ」と笑顔を浮かべた。

 1軍昇格が決まった時、本塁打を放った時などは、浅野は必ず恩師に電話をかけてくるという。「もうこっちはいいからって。巨人で活躍できるようにそっちを向いときなさいって言ったんだけど」。そう恩師に促されながらも、高卒2年目の19歳は、まだまだ教えを請いたいことがたくさんあるようだ。

(喜岡桜 / Sakura Kioka)

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