DeNA筒香が示した存在感 下剋上の切り札へ…専門家が語る献身性「欠かせない戦力」
代打で登場し巨人高梨から逆方向へ値千金の左前適時打
■DeNA 2ー0 巨人(16日・東京ドーム)
日本シリーズ進出を懸けてセ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージを戦っている巨人とDeNA。シーズン3位からファーストステージで阪神を破り、“下剋上”を狙っているDeNAにとっては、筒香嘉智外野手の存在が切り札になるかもしれない。
筒香は16日、敵地・東京ドームで行われたCSファイナルステージ第1戦で決定的な役割を果たした。1-0とリードして迎えた7回、1死一、三塁の好機に代打で登場。巨人はここで先発の戸郷翔征投手から、変則左腕の高梨雄平投手にスイッチした。高梨は言うまでもなく、球の出所が見にくい上、左打者の内角をえぐるシュートと外角へ逃げるスライダーの両方を操る“左打者キラー”だ。
1、2球目は内角にシュートを連投され、カウント1-1。3球目に、ストライクゾーンからボールゾーンへ絶妙に逃げていくスライダーを空振りさせられた時には、高梨優位にも見えた。4球目は、最初から大城卓三捕手が外角のボールゾーンに構え、カウント2-2に。そして5球目、筒香は真ん中低めにやや甘く来たスライダーを“逆方向”の左前に弾き返し、貴重な追加点をもぎ取った。DeNAはこのまま2-0で接戦をものにした。
現役時代にヤクルト、横浜(現DeNA)など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、筒香の4球目に勝負の分かれ目があったと分析する。「4球目に外へはっきりとボールとわかるスライダーを見せられたことで、筒香は少し楽になりました。次にスライダーが来れば、必然的に内角寄りに甘く感じられるからです。あとは、内角のシュートが来た時に詰まらされないように注意すればよかった。ですから筒香は5球目には、早めにステップしてシュートに備えた上で、真ん中低めに来たスライダーをとらえました」
もし4球目のスライダーが、空振りを奪った3球目よりもほんの少し外側の際どいコースであれば、「筒香はシュートとスライダーの両方を警戒し、迷いが生じていたと思います」と野口氏は見る。いずれにせよ、筒香の豊富なキャリアに裏打ちされた読み、磨き抜かれた技術があればこその殊勲打だったことは間違いない。
「チームの危機に自ら志願してサードを守った」献身的な姿勢
代打の切り札として、存在感は増すばかり。さらに野口氏は「スタメン出場している誰かに何かがあれば、筒香が先発することも十分あり得ます」とした上で、「阪神とのファーストステージで、宮崎(敏郎内野手)が右足をつって途中交代する一幕がありました。筒香のことですから、ひょっとすると既にサードの練習を始めているかもしれませんよ。過去には、チームの危機に自ら志願してサードを守ったことがありました。フォア・ザ・チームの精神が旺盛な男ですから」と、献身的な姿勢を称賛する。
筒香はメジャー挑戦前の2017年、DeNAの4番としてシーズン3位からCSを勝ち上がり、日本シリーズ進出を果たす原動力となった経験がある。野口氏が「今も欠かせない戦力です」と断言するのもうなずける。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)