新天地で掴んだポジション 吉田輝星が開いた新境地…きっかけは「中嶋さん効果」

オリックス・吉田輝星(左)と中嶋聡前監督【写真:荒川祐史】
オリックス・吉田輝星(左)と中嶋聡前監督【写真:荒川祐史】

オリックス・吉田輝星「中嶋さん効果ですか? ありましたよ、ほんとに」

 新天地で受けた助言が新境地を開いた。トレードでの移籍1年目で50試合登板を果たしたオリックス・吉田輝星投手。復活の秘密は中嶋聡前監督からのアドバイスだった。「中嶋さん効果ですか? ありましたよ、ほんとに。ピッチングが(上手に)できた初めての年でした」。衝撃の監督退任を聞き、吉田は大きな目を見開いた。

 昨シーズン終了後に日本ハムからトレードでオリックスの一員になった。5月下旬にコンディションを整えるために1度は1軍登録を抹消され、最終盤で右肘を痛めて戦列を離れたものの、50試合に登板し、4勝0敗14ホールド、防御率3.32でチームの勝利に貢献した。

 中嶋前監督との縁は同郷の秋田県出身。ライバルチームにいても挨拶は欠かさず、気軽に声を掛けてもらえる関係にあったが、オリックス移籍後、関係はさらに密接になった。最も影響を受けたのは、投球術だった。

「(マウンドでボールに対する)打者の反応を見ることはできるのですが(それを見て)どうすればいいのかというのは、プロレベルではよくわかっていなかったんです」という吉田にとって、1987年の阪急(現オリックス)から西武、横浜(現DeNA)を経て、2015年に日本ハムで現役を終えるまで捕手として活躍した中嶋前監督の存在は大きかった。

「キャッチャー目線と打者目線の両方を話せる中嶋さんの意見は、参考になりました。それからは、キャッチャーのサインを見た時に、こういう(打者の)反応が欲しいのだなとか、次にサインが出る球を予測して、今はどこに投げようかなと、一瞬で計算して投球を組み立てられるようになったんです」

 シーズン途中からは、捕手のサインに首を振らず捕手の意図を読み取るように気持ちを切り替えると「だんだん、僕の投げたい球のサインを出してくれるようになったりして、意思の疎通もできるようになったと思います」。中嶋前監督の言葉が、自らの投球術を高め、バッテリーの息も合うようになるという相乗効果を生んだわけだった。

「中身の濃い、充実した1年でした。ピッチャーとして確立していけるという中でシーズンを終われたので、来年につながると思います。課題も見えてきたので、オフには手応えを感じたものを引き続きよくしていきたいです」。端正な顔を、さらに引き締めた。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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