阪神24歳が侍Jの4番に抜擢されたワケ 専門家が絶賛…“国際大会向き”の能力
4番の阪神・森下は豪州戦で3安打…新井宏昌氏が絶賛する「勇気と天性の才能」
「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」オープニングラウンド・グループBが13日に開幕。野球日本代表「侍ジャパン」はバンテリンドームで豪州戦に臨み、9-3の快勝で好発進した。「4番・右翼」で出場した阪神・森下翔太外野手が4打数3安打2打点1四球と気を吐いた。来季の阪神、さらには2026年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも、チームのキーマンとなりそうだ。
森下の持ち味が光った。初回は楽天・辰己涼介外野手の左犠飛で先制した直後、1死一塁で四球を選んだ。2-0の3回1死で迎えた第2打席は、初球のストレートをとらえ、遊撃内野安打。安打と内野ゴロで三塁へ進塁した後、相手投手の暴投で3点目のホームを奪った。
7回先頭で三塁線を破った二塁打は、代わったばかりの相手投手の初球をとらえた。8回2死一、三塁ではカウント3-1から左中間へ2点二塁打を放った。豪州はこの日、小刻みな継投で侍打線をかわそうと12人の投手を繰り出したが、森下は初球打ちを2度敢行し、いずれもヒットにした。
現役時代に通算2038安打を放ち、引退後もオリックス、広島などで名コーチとして鳴らした野球評論家・新井宏昌氏は「森下が初球打ちで結果を出せるのは、勇気と天性の才能があるからだと思います。ネクストバッターズサークルから相手の投球を観察しながらでも、どうタイミングを合わせるかを考えていると思います。初見の投手と対戦することが多い国際大会では、なおさら頼もしい資質です」と称賛する。
「チャンスで力むことなく、自分のスイングができる」
プロ2年目の森下が4番に抜擢された背景には、今季セ・リーグで本塁打、打点の2冠に輝いたヤクルト・村上宗隆内野手が、シーズン最終戦で自打球を当て右足親指を骨折。本塁打、打点で2位の巨人・岡本和真内野手も、腰を痛めて今大会出場を辞退したことがあげられる。昨年のWBC優勝メンバーであるDeNA・牧秀悟内野手は、今月3日まで日本シリーズを戦っていた疲労を考慮されてか、この日は6番だった。
24歳の森下は今季、129試合出場で打率.275、16本塁打73打点。3部門全てで、1年目の昨年を上回り、得点圏打率はリーグ3位の.351をマークした。新井氏は「走者を置いた場面に強い打者です。チャンスで力むことなく、自分のスイングができる。残した数字以上に、チームを勇気づける打点や出塁が多く、『もうダメかな』という展開で、森下が打って反撃のきっかけをつかんだり、点差を縮めたりするのを何度も見ました」と語る。
阪神では、今季チーム最多の90試合で4番に座った大山悠輔内野手が国内FA権行使を明らかにしており、来季の去就が不透明になっている。他に今季4番は、佐藤輝明内野手が39試合、近本光司外野手が12試合務めたが、森下も1試合ある。8月13日の巨人戦(東京ドーム)でプロ入り初の4番を任され、初回に先制2ランを放った。新井氏は「仮に大山が残ったとしても、森下がこのまま力をつけていけば、来季は十分、4番の座を争えると思います」と太鼓判を押す。
森下の存在感が増しそうなのは、2026年3月に次回WBCを控える侍ジャパンも同様だ。来オフにはポスティングシステムによる村上のメジャー移籍が確実視され、岡本の流出も取り沙汰されている。2026年がメジャー移籍初年度となれば、WBC出場へハードルは高くなる。それでも、新井氏が「村上と岡本がいても、あるいはいなくても、主軸を務められる選手だと思います」と評する森下の存在は頼もしい。今大会は、森下が日本の中軸へと駆け上がるきっかけになるかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)