完全アウェーは「甲子園の次元じゃない」 我を失いかけた25歳…音聞こえず「終わったと」

台湾戦に登板した侍ジャパン・北山亘基【写真:小林靖】
台湾戦に登板した侍ジャパン・北山亘基【写真:小林靖】

4万人が集結…地元・台湾の応援は「甲子園の次元じゃない」

 地鳴りのような大歓声の中、なんとか逃げ切った。野球日本代表「侍ジャパン」は16日、「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」グループBでチャイニーズ・タイペイ戦に3-1で勝利した。4万人が集結した台北ドームは完全アウェーの雰囲気。北山亘基投手(日本ハム)は「人生初です。ダントツで。桁違いでした。甲子園の次元じゃないみたい」と苦笑いして振り返った。

 地元記者によると、この日のチケットは発売から5分で完売。ほとんどが地元・台湾のファンで、チアガールのダンスとともに大歓声が沸き起こった。記者のスマートウォッチでは105デシベルを計測。チャイニーズ・タイペイ打線が安打を放つ度に「一時的な難聴になるおそれがあります」と警告が鳴った。

 選手たちにとってもここまでのアウェーは経験したことのないものだった。3番手で登板した北山亘基投手(日本ハム)は7回にタイ・ペイフォン捕手にソロを被弾するなど、2回1安打1失点だった。8回2死では特大の中飛を打たれたが、打球音が聞こえず。「打った瞬間ホームランみたい声聞こえたので。『終わった』と思った」と苦笑い。頭上を通った時には「(本塁打を打たれたと)諦めていました」と振り返った。

 ただ、決して準備は怠らなかった。試合前には金子誠ヘッドコーチがミーティングで「マウンドに立つ可能性がある投手は(相手の声援を)頭に入れて」とアドバイス。北山自身もブルペン待機前に一度ベンチから応援を確認。自分がマウンドに立つイメージを膨らませた。

 その甲斐もあって、侍投手陣は4人で失点はソロ1点のみに抑え込んだ。6回2死一、二塁のピンチで登板した鈴木昭汰投手(ロッテ)は、「(台湾の応援は)すごかったですけど、ロッテの応援もすごいので」とニッコリ。マスクを被った坂倉将吾捕手(広島)は
「才木は初回から笑ってたので大丈夫かなと。みんな心得ていたんじゃないかなと思います」と驚きの事実を明かした。

 チームは開幕から3連勝。17日のキューバ戦に勝利すれば、スーパーラウンド進出が決定する。この日、唯一の失点を喫した北山も「この経験をどうつなげるかだと思うので。しっかり練習してもっとレベルアップしたいと思います」。異様な空気に打ち勝ち、また一つ世界一へ近づいた。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)

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