巨人1位の同僚を“羨望”も「コツコツと」 育成指名に悔しさ…17歳が決めた「本当の勝負」
オリックス・育成3位の上原「自分はどちらかというと、這い上がるタイプ」
勇往邁進といく。オリックス・育成ドラフト3位の上原堆我投手が、逆境をはね返し1年目の支配下選手登録を目指している。「自分はどちらかというと、這い上がるタイプ。高校時代からそうやってきましたから、この立ち位置は別に苦ではありません。逆に気合が入っていいのかなと思います」。真っすぐ前だけを見据えた。
上原は静岡県伊東市出身。「伊東ジュニア」の監督を務めている父・健二さんに野球の手ほどきを受け「静岡裾野シニア」時代に全国大会を経験。花咲徳栄高では3年夏にチームを5年ぶりの甲子園に導いた。最速148キロのストレートと切れ味の鋭いスライダーが武器の本格派右腕だ。
2024年のドラフトでは、チームメートの石塚裕惺内野手も巨人から1位指名された。普段から仲の良い石塚のプロ入りを自分のことのように喜んだ上原だが、指名順位や支配下、育成という立場の違いを自分に対する厳しい評価と受け止めた。
「石塚が1位で、自分は3時間後くらいに育成の指名で、その差というのを感じました。すごく悔しいという気持ちが強かったですね」。しかし、悲観はしなかった。これまで、決して順風満帆とは言えなかった野球人生。高校2年の秋まで抑えだったが、先発に転向した。姉2人の環境からか「俺が俺が、という感じではありませんでした」という上原の転機だった。
冬場に走り込み直球の質と精度を高めるとともに、同じ軌道でスライダーを決める練習に取り組み、多くのライバルがいるチームの中でエースの座を勝ち取ることができた。自身を「負けず嫌い」と公言する。「岩井(隆)監督からは、投げるたびに厳しい言葉をかけていただきました。技術よりは、逃げない投球などマウンドでの姿勢を1から教わりました。自分の立ち位置を理解してそれを踏まえたうえで負けず嫌いになっていったので、うまく噛み合ったのは高校からですね」。
「支配下で指名されていたら、現状に満足してしまっていた部分があったかもしれません」
名前の「堆我」は、両親がつけてくれた。「タイガと決めてから漢字の意味を調べ、コツコツと積み重なって高くなる、という意味を持つ『堆』と、自我を確立してほしい願いを込めました」とは母の由雅里さんの説明だ。
「自分でも名前はすごく気にいっています。野球人生もそういう感じなんです。身長や体重、野球の成長もそうなんですが、バーンと伸びるタイプじゃないんです。球速も含めてほんとに徐々に伸びていくタイプ。一気に5キロではなく、本当にコツコツと1キロずつ、一歩ずつ進んできた感じです」
同校OBで上原を担当した岡崎大輔スカウトは「野球に対する取り組む姿勢や負けず嫌いな性格、マウンドから打者を見下ろして投げられるところはプロ向き。高卒ですが体作りはできているので、1年目から1軍で投げることができると思っています。育成は給料も安く苦しいこともありますが、野球をする上でそんなのは関係ないですし、彼にはそういう意識が備わっていると思います」と期待する。
「支配下で指名されていたら、現状に満足してしまっていた部分があったかもしれません。プロに入ってからが本当の勝負。石塚は活躍すると思うんで、負けてはいられません。1年目から支配下に上がってやろうという気持ちです」。1月6日に入寮。8日からは新人合同自主トレも始まった。逆境をはね返してきた自負を胸に、着々とアピールする。
(北野正樹 / Masaki Kitano)