巨人加入の田中将大は「上がれない可能性も」 恩師が指摘…危惧される“起用パターン”

巨人・田中将大【写真:小林靖】
巨人・田中将大【写真:小林靖】

楽天投手コーチとして指導…恩師・佐藤義則氏が分析する右腕復活への条件

 日米通算197勝で、大記録まで“残り3”に迫っている田中将大投手は、今季から巨人に加入する。日本球界復帰以降、黒星が白星を上回るシーズンが続くが、レジェンド復活の鍵はどこにあるのだろうか。かつて若手時代の田中を楽天1軍投手コーチとして指導した野球評論家・佐藤義則氏が分析。持ち前の制球力には太鼓判を押すものの、現時点で抱える課題点の改善や、開幕からの起用法にもかかってくると見る。

 佐藤氏は現役時代に通算165勝を挙げた右腕で、引退後は阪神コーチとして井川慶氏(阪神→ヤンキース)、日本ハムのコーチとしてダルビッシュ有投手(現パドレス)、楽天コーチとして田中と、相次いで後のメジャーリーガーを育て上げるなど、手腕に定評のある名伯楽だ。

 楽天では2009年から6年間1軍投手コーチを務め、その間、3人の監督(野村克也氏、マーティ・ブラウン氏、星野仙一氏)に重用された。田中は佐藤氏の就任初年度の2009年にプロ3年目で15勝(6敗)を挙げ、2011年に初タイトル(最多勝、最優秀防御率、最高勝率の3冠)。そして2013年には空前絶後の24勝0敗1セーブの記録を打ち立て、楽天初のリーグ優勝、日本シリーズ制覇の原動力となり、翌年からメジャーへ巣立っていった。

 田中の成長を促し、見守ってきた佐藤氏の目に、現状はどう映っているのか。「コントロールに問題はないと思います。ただ、ここ2、3年、全体的にスピード感が落ちているのは確か。真っすぐは150キロを計測することもあるけれど、コンスタントでない。スプリット、スライダーにもスピードがありません。(2023年10月に)右肘のクリーニング手術を受けた影響なのか、腕の振りが弱くなっています」と指摘する。

 田中は手術明けの昨年、なかなか調子が上がらず、1軍登板は9月28日のオリックス戦(5回4失点で敗戦投手)のみに終わった。ストレートは平均143キロ前後、スプリットは同135~136キロだった。「田中が得意とするスプリットは、スピードがないと、ストライクからボールになる低めの球を振ってもらえない。結局カウントを悪くして打たれるパターンに陥っていました」と分析する。

4歳上の岸は昨年規定投球回クリア「36歳は限界が来る年齢ではない」

「まだまだスピードにこだわって練習してほしい。36歳の田中は、現代の野球では決して限界が来る年齢ではありません。全盛期同様とまではいかなくても、(ストレートは平均)147~148キロは出るようになると思います。年上の岸(孝之投手=楽天)はストレートにこだわって、現状では田中より腕の振りがいいですから」と佐藤氏はエールを送る。

 ちなみに、田中より4歳年上の40歳の岸は昨年、規定投球回をクリアし、リーグ最多タイの11敗(6勝)を喫したものの、防御率2.83をマークしている。

 田中が今季、通算200勝に到達できるかどうかは、巨人での起用法によっても変わってくる。「専ら先発で起用されるのは間違いないでしょう。中6日で回れるのか、1週間~10日を要するのかという問題もありますが、それ以前に、開幕から1軍のローテーションに入れてもらえるのか、調子が上がるまで様子を見ることになるのかがポイントになると思います」と佐藤氏は強調する。

 そして、「私個人的には、“6番目の先発”でもいいから、開幕からローテに入ってほしい。最初に使ってみて、それでダメなら外す、という形が理想です。調子が上がるのを待っていたら、ずっと1軍に上がってこられない可能性もある気がします」と語り、昨年と同じパターンにハマることを危惧する。

 となれば、プロ19年目の“レジェンド”田中であっても、新天地でのキャンプ、オープン戦で復活ぶりを猛アピールすることが必要になる。「登板数さえこなせれば、200勝までは行ける」と背中を押す佐藤氏。“マー君”の生き残りを懸けた闘いが始まる。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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