聞こえた銃声「逃げろ」…移動中のバス襲撃 元DeNA選手が告白した異国での“壮絶体験”
元DeNAの乙坂智がメキシコ、ベネズエラでの衝撃体験を告白
チームバスが襲撃されました――。元DeNAの乙坂智外野手はこれまでメキシコやベネズエラの複数球団でプレー経験を持つ。日本と比べて治安が悪い中南米では、考えられないような壮絶な体験をしてきたという。
「危険な目ですか? いっぱいありましたよ」
DeNA時代に初の中南米挑戦となった2017年オフ、単身でウインターリーグ参戦となったメキシコでは「夜に街中を歩いていたら2、3メートルの距離で人が撃たれました。運動会の徒競走の号砲みたいな音がして……」。一緒にいたチームメートの「逃げろ!」の声で一目散に宿舎へ戻ったという。
また、メキシコでは屋外にバイキング形式の食事が用意されており、その匂いにつられて虫がたかっているという。「チームメートもその虫を払って皿に乗せて『全然ウマくないな』とか言いながらバクバク食べています。僕は2024年シーズン中、3回食中毒になりました。食あたりなんてかわいいものです」と笑った。
さらに2023年にプレーしたベネズエラでは「チームの移動バスが山賊に襲撃されました」と衝撃の告白。深夜に突然、投石によって窓ガラスが割られ、バスは急停止。女性トレーナーの悲鳴が車内に響き、選手らは目を覚ました。
「バスが停まったあとに銃声が聞こえました。バスには軍隊の人が2人乗っているので、その人たちが出ていって撃ち合いだしました。僕らは伏せるように言われていて、毛布を防災頭巾みたいに頭からかぶって小さくなっていました。『ヤバい、ヤバい』って」
ロッカールームで野球道具“盗難”も「必要とされている人のところにいく」
山賊は退散、乙坂らが乗っているチームバスは窓ガラスが割れたまま、目的地まで運転を再開したという。「びっくりしましたけど、こういうこともあるのかな、と思いました」。
球場にいても決して安心はできない。クラブハウスでロッカーに置いていた自分の野球道具が“消える”ことは頻繁にあるという。「最初の頃は『おい!』ってイライラすることもありましたけど、置きっぱなしにしていた自分も悪い。その道具は(持ち去った)彼が必要だったから持っていった。モノって必要とされている人のところにいくって言うじゃないですか。今はそう思えるようになりました」。
現地ではグラウンド内、外で緊張の日々。だからこそ日本に帰ってくると「表情が緩みますね」という。「向こうでは常に気を張っているから、プライベートの写真とかみても表情は厳しいんです。日本にいると自然と安心できますよね。顔つきは変わりますよ」。30歳の乙坂は柔和な笑みを浮かべた。
(湯浅大 / Dai Yuasa)