「日常って気楽」 引退→広報転身で理解した現役の“重圧”、10年経て向き合った感情

ロッテ・上野大樹広報【写真:球団提供】
ロッテ・上野大樹広報【写真:球団提供】

セカンドキャリアは球団広報…2013年には42試合に登板した上野氏

 2015年に現役を引退した上野大樹氏は、アカデミーのコーチなどを経て現在はロッテの球団広報として活躍している。7年間選手としてプレーしていた経験は、選手をそばで支える今も生かされている。

 練習熱心で、まじめな性格で知られた上野氏。戦力外を通達され、球団からは「球団に残る道もある。あとは上野で考えてくれ」と転身の打診があった。「その上でトライアウトも受けさせてもらって、引退を決めた時に僕からお電話させてもらいました」。最初の2年間はマリーンズアカデミーのコーチを務め、スタジアム部とファンサービス部を経て、現職に至る。

 広報は各メディアからの取材依頼の調整や、試合やイベント時に囲み取材を設定するのが主な仕事。さらに、球団公式SNSやYouTubeにアップする写真、動画も撮影。今オフには選手によるキャンプ企画「マリキャン」にも携わり、上野氏自らカメラを回している。

「選手の魅力を伝えることを目的としています。もっと選手、マリーンズを好きになってもらうにはどうしたらいいかっていうのを考えていますね」。今は、ファンの反応がすぐに返ってくる時代。「キャンプの企画でも、『この選手ってこんなに面白いんだ』『マリキャンがきっかけで応援しています』っていうコメントを見ると、やってよかったなって感じます」。

 難しさを感じる場面もある。試合中、ホームランを打った選手や登板を終えた投手のもとへ行き、コメントを取って文面で報道陣に配布するのも仕事の一つ。もちろん、いい結果が出せなかった選手にもコメントを聞きにいかなければいけない。

 テレビには映らないようなベンチ裏では、グラブを叩きつけるなど、フラストレーションを露わにする選手も少なくない。そんな感情も、元選手だから理解できる。「選手って日々すり減らしながら平常を保ってプレーしているんです。僕も引退して思いますけど、こんなに日常って気を楽にしていいんだなって」。引退した今、改めて選手の過酷さを実感している。

「それでも、広報としてはそれを伝えるのが仕事だと思うので。ニュアンスをうまく(報道陣の方に)伝えられればなと思っています。苦しいのは選手ですし。葛藤しながらやっている部分もありますね」

 今年でスタッフになって10年目となる。「いろいろな仕事に携わらせてもらって、会社にも感謝しています。球団に、ファンに、自分ができることを還元していきたいなと。会社から求められる部署で、自分なりに、自分だからこそできることは何か、考えながらやっています」。球場ではファンから声をかけられることもしばしば。「本当に、ありがたいですよ」。現役時代は先発やリリーフ、様々な場面を経験し、もがいてきた。これからも求められた場所で、全力投球を続ける。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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