田嶋大樹の“本音”…「周りの人より劣っている」 気になった前監督の金言「どこに素質が」
オリックス・田嶋大樹…中嶋前監督に「僕のどこに素質があるのか聞いてみたかった」
明鏡止水の境地で活路を開く。オリックスの田嶋大樹投手が「持っている力からするともったいない」と話した中嶋聡前監督の“進言”を胸に自己研鑽に励む。「インターネットは全く見ないので、わかんないです。逆に僕のどこに素質があるのか聞いてみたかったですね」。前監督の話を伝え聞いた田嶋が、目線を上げた。
前監督の発言は、昨年10月1日に行われたソフトバンク戦での田嶋の投球に関してのもの。昨季の最終登板となったマウンドで、田嶋は3回表に6点の援護を受けながら3、4回に失点。4点リードの5回は栗原陵矢内野手に2ランを許し、2死一、二塁で降板した。
監督就任後の3年間、選手を責めることの少なかった指揮官。良い時は別として、個人名を挙げる珍しいケースは、勝ち星まであと1つのアウトを奪えず、6勝8敗でシーズンを終えた田嶋へのエールだったのだろう。5日後に電撃退任を発表した中嶋前監督にとって「大成してほしい」という思いを込めた田嶋への最後のメッセージになった。
飾らず、腐らず、ブレることなく歩んできた田嶋の野球人生。受け止めもピュアだった。「自分に自信がないし、どれだけ練習を重ねても周りの人より劣っていると思ってしまうタイプ。素質がわかっていないから自信がないんで、僕の良い素質というのがどこなのか、聞きたかったですね。監督が言ってくれたら自信にもなったんですけどね」と吐露する。
指揮官がローテーション投手とのコミュニケーションを欠くことはないが「中嶋さんはすごく優しい方で、選手に対するアドバイスなどもすごく気をつかってくださっていました」と厚澤和幸投手コーチがいうように、選手の性格などを考慮。婉曲な助言が十分に届かなかったのかもしれない。
新たな試みにも着手している。今年1月中旬からは、プロ野球やソフトボール、プロゴルファーらが師事するアスリートコンサルタント、鴻江寿治さん主宰のキャンプに参加し、フォーム改造に取り組んでいる。菅野智之投手(オリオールズ)が巨人時代に取り入れた両腕から始動する大胆なフォームにチェンジ。このままフォームを固めるかは未定だが、変える怖さはなかったそうで「新しい発見しかなかった。現状維持で衰退する方が怖いんで」と新たな取り組みに意欲を示した。
田嶋は2024年シーズン終了後に「課題は有り余るほどあります。どこをどう成長させていくのか白紙です」とマインドセットをテーマに掲げていた。「年々、データも取られていますから球種や球質もバッターのみんながわかっているし、それ以外の問題もいろいろあるので、まだまだ課題は山積みです」。中嶋前監督の言葉を自分なりに解釈し、ステップアップを目指す。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)