イチロー氏が見せた壮絶な“覚悟” オーナーまで介入する事態に…元同僚が見た重圧の代償
2009年に唯一のIL入りも…リーグ2位の打率.352、1位の225安打
イチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)は資格1年目で米野球殿堂入りを果たした。メジャー通算3089安打、10年連続200安打、メジャー年間最多262安打など数々の実績を残してきたが、特筆すべきは耐久性。メジャー19年間で故障者リスト(IL)入りはわずか一度だけだった。2009年に患った胃潰瘍による離脱。壮絶なエピソードが米スポーツ局の取材で明かされている。
米スポーツ局「ESPN」のオールデン・ゴンザレス記者とジェシー・ロジャース記者は21日(日本時間22日)に「イチローが殿堂入りする理由」と題し、チームメートや対戦相手による証言を取り上げた記事を公開。2009年にマリナーズに加入したマイク・スウィーニー氏は、イチロー氏が患った胃潰瘍が「ひどい状態だった」と振り返った。
イチロー氏は2009年シーズン前に開催された、第2回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本代表としてプレー。不調もありながら決勝の韓国戦では延長10回に決勝タイムリーを放ち、連覇の立役者となった。スウィーニー氏いわく、ミネソタでの開幕戦5日前にイチロー氏はチームに合流。しかし直後にチームドクターのもとへ向かい「すごく具合が悪いんだ」と吐露すると、検査の結果、胃潰瘍だと判明した。
そして「自国を背負ったプレッシャーがものすごかった。WBCで日本代表として出場することで、文字通り、彼は日本という国を背負ったんだ」と、重圧を跳ねのけた偉才に最敬礼した。一方で症状は深刻で、イチロー氏の開幕戦出場は絶望的だった。それでも同氏は出場を要望。ドクターはオーナーに直接電話をかけ、「イチローは開幕戦に出たいという意志が固いが、開幕戦まであと4日しかない。私はチームドクターとしてそれを許可することはできない」と訴えたという。
イチローから最悪の事態はどうなるか聞かれ、ドクターは「この出血性潰瘍が破裂すれば、命に関わる可能性がある」と申告。それでもイチロー氏はドクターの目を見つめて「そのリスクを負うよ」と言い返したという。最終的にはオーナーが介入し、4月2日(同3日)にIL入りとなった。療養を経て15日(同16日)に復帰し、146試合出場でリーグ2位の打率.352、1位の225安打、OPS.851。大きな病気を患ってもなお、圧倒的な成績を残すさすがの姿を見せた。
(Full-Count編集部)