燕の新人は「大きな収穫」 専門家も絶賛、逸材の“魔球”は「ナチュラル」…神が与えた才能

リーグ連覇後に2年連続5位と低迷、失点数とチーム防御率はリーグワースト
2021年からリーグ連覇を達成した後、2023年からは2年連続5位と低迷中のヤクルト。特に投手陣は、失点数とチーム防御率が2年連続リーグワーストと不振にあえいでいる。しかし、現役時代にヤクルトをはじめ4球団で捕手として計21年間活躍した野球評論家・野口寿浩氏は、古巣の沖縄・浦添キャンプを視察し、新人左腕のピッチングに目を輝かせた。
ドラフト3位ルーキーの荘司宏太投手。山梨・駿台甲府高、国士舘大、セガサミーを経てプロ入りした経験豊富な24歳の左腕は14日にライブBPに登板し、村上宗隆内野手、ドミンゴ・サンタナ外野手、ホセ・オスナ内野手ら主力を相手に投球を披露した。
荘司といえば、リリースの際に顔が三塁方向を向く“あっち向いてホイ投法”が話題になった。野口氏は「確かに独特の投げ方です。相手打者は最初、面食らうでしょう。しかし、彼の最大の武器は他にあります」と語気を強める。
野口氏は「荘司はうまく緩急をつけることができる投手だとわかりました。ライブBPではチームスタッフが計測していたスピードガンで、MAX143キロをマークする一方、100キロ台のチェンジアップを操っていた。このチェンジアップは、鋭い腕の振りながら球がうまく抜けていて、打者にとってタイミングを合わせづらいと思います。どろんとした縦割れの大きいカーブもあって、相手打者の目先を変える上で効果的だと思います」と絶賛した上で「それらも彼の武器ではありますが“最大”のものではありません」と語る。
最終的に野口氏は、荘司の最大を武器を「真っスラです」と明かした。真っスラとは、直球とスライダーの中間的な球種で、直球並みのスピードが出て、カットボールに近い。しかし、意識的に変化させるカットボールと違い、投げている本人の意思とは関係なく、ナチュラルに変化しているケースが多い。
「荘司の場合もおそらく、普通に真っすぐとして投げた球が、ナチュラルに曲がっているのだと思います。投げている本人も曲がり幅を計算できず、1球1球違っていたりするので、相手打者はなおさら打ちづらい。ライブBPでもサンタナ、オスナといった右打者が詰まらされていました」と解説する。
「右打者の外角に投げる時には曲がらず、内角の時だけ曲がる」
「荘司のいいところは、右打者の外角(左打者の内角)に投げる時には真っスラしない。右打者の内角(左打者の外角)に投げる時にだけ曲がって、詰まらせたり、引っ掛けさせることができるところです」と野口氏は付け加えた。
「例えば、内角に食い込む真っスラを意識させられた右打者は、今度は外角のボールになるチェンジアップに対し、バットを止めることが難しくなると思います」
図らずもナチュラルに変化する“真っスラ”を武器にする投手は、過去にもいた。野口氏は「僕が阪神の現役捕手だった頃、先発投手として活躍していた岩田(稔氏)や上園(啓史氏)がそうでした」と振り返る。
プロ1年目から、手薄な左の中継ぎとして期待される荘司。「勝ちパターンに組み込むのも面白い」と野口氏は見ている。さらに「ブルペンで田口(麗斗投手)の投球も見ましたが、少し仕上がりが遅いような気がして、心配になりました。もしかすると、荘司の存在が今後ますますクローズアップされていくかもしれません」と予測した。「荘司はいいですよ。ヤクルトにとって大きな収穫です」と改めて感嘆していた野口氏。変則新人左腕がチームの救世主となるか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
