まさかの“15.43”も…諦めない「サイ・ヤング賞」 19歳逸材が描く夢、浴びたプロの洗礼
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オリックス・東松快征が目指す“宮城ロード”
偉大な先輩に追いつくため、甘えを捨てて自分と向き合う。オリックスの高卒2年目・東松快征投手が、目標とする宮城大弥投手を超えるため、自分を厳しく律することを誓った。「去年は、打たれても1年目だからしょうがない……という緩い考えになってしまっていたんです」。そう話しながら、悔しそうな表情を浮かべた。
東松は愛知・享栄高からドラフト3位でオリックスに入団。新人年の昨季は、1軍昇格はなくウエスタン・リーグで7試合に登板し、0勝3敗、防御率15.43に終わってしまった。
有言実行のタイプだ。プロ入りが決まり将来の目標に「サイ・ヤング賞」を挙げた。ただ大言壮語なのではなく、前提としたのは「高卒新人で1軍登板1番乗り」「2、3年目にローテーション入り」「5年目にはエース」「沢村賞を獲ってメジャー入り」というステップアップのスケジュールだった。しかし、その成長曲線は思ったようには描けていない。プロ生活1年を振り返ってたどり着いた原因が「甘え」だった。
「自分に甘えていたというか……。『1年目だから、打たれても気にするな』と皆さんに言っていただいて。今までなら、打たれたら『なんでやねん』という気持ちになっていたんですが」。練習への取り組みにも反省があった。「(ウエート練習で)あと10キロ重くして持ち上げればいいのに、『同じ重さでもいいか』と。その考えがなければ、(成績は)悪い方に出ていなかったんだと思っています」。
高卒1年目の指導は、プロで生活していくための体作りに重点が置かれる。一方で、怪我を防ぐために過度の負荷もかけられない難しいバランスが必要になるため、東松も決して自分に甘くなっていたわけではない。
19歳左腕の投球を目撃の岸田護監督「良い球を投げていた」
それでも自分を責めるのは身近に素晴らしい目標があるからだ。同じ高卒左腕の宮城は、1年目に2軍で13試合に登板し6勝2敗、防御率2.72。リーグ戦終盤には1軍に昇格してプロ初勝利を挙げ、1軍に定着した2年目は13勝4敗、防御率2.51で新人賞に輝いた。
将来の夢を実現させるためにも、2年目の成績で宮城に迫らなければならない。甘い考えを捨てると決め、好不調の波が激しい一因だったフォーム改造にも着手した。
昨秋の秋季キャンプから、右足を上げ弓を引くように上体をそらすダイナミックなフォームから、上げた右足を静止してタメを作るフォームに改造した。「今永(昇太)さん(カブス)や巨人の井上(温大)さんのきれいなフォームを参考にしました。右足を1度止めることで、体が早く開く癖も修正しています。ボールのばらつきがなくなった実感があります」と手応えを語る。
春季キャンプでの実戦形式の打撃練習では、打者6人に30球を投げ、安打性の当たりは1本だけ。26日にはロッテとの練習試合で1回を無失点に封じた。岸田護監督からも「良い球を投げていた」との評価を受けた。“第2の宮城”に向け、厳しく自分を律する。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
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