ドラ2入団から5年目…元謙太が目指す場所 後藤駿太に弟子入り志願した“本当の理由”

オリックス・元謙太、名手の「感覚をずっと知りたかったんです」
長所を伸ばし、定位置の奪取を狙う。オリックス・元謙太外野手が、自信のある守備を磨くことでプロ5年目でのレギュラー獲得を目指している。「1番の課題はバッティングですが、成績も上がってきているのでやっていることは間違いないと思っています。そこは崩さず、自信のある守備を磨くことを考えています」。いつになく表情を引き締めた。
元は中京高から2020年ドラフト2位でオリックスに入団。2年夏の甲子園では準々決勝の作新学院戦で、逆転満塁本塁打を放ちベスト4進出に貢献。1、2年目にウエスタン・リーグで100試合以上の出場をして経験を積んだが、打撃面に課題が残った。1軍では2022年、2024年に各5試合出場とチャンスを生かし切れていない。
プロ4年目を終えて、守備に特化した練習に取り組むことにした。本来なら打撃を強化するべきなのだろうが、球団からも評価されている守備をさらに磨くことで出場機会を求めた。自主トレはチームの先輩、佐野皓大外野手と、現在は中日でプレーする後藤駿太外野手のもとで過ごした。年末は佐野の地元・大分で約2週間、2人で。年明けは後藤の地元・群馬で、3人で約1週間、汗を流した。
「打撃も練習をしましたが、守備が中心でした。感覚をずっと知りたかったんです。うまい選手を見ているとうまくなりますし、自分も自信がある部分なので、すり合わせたらどうなるんだろうかと。『スローイングは心配ない。自信を持て』『もう土台はできているから、1軍で経験を積んで感覚を得るだけだ』と言ってもらえました」
後藤は前橋商高から2011年ドラフト1位でオリックス入り。球団史上初の高卒新人外野手として開幕スタメンを果たした、俊足・強肩の左打者。2022年にトレードで中日に移籍し、守備固めや代走で存在感を示している。後藤も打撃面に課題を抱え、定位置を確保することはできなかった。今回の“弟子入り”は後藤から声をかけたといい、同じ高卒出の後輩の活路を開いてやろうという思いが後藤にはあったのだろう。
収穫も大きかった。打球を処理するために1歩目が重要視される外野手だが、後藤からは1歩目だけにとらわれず、最短の距離で打球処理をすることの重要性を教わったという。守備力を強化したことで、打撃面にも好影響が出ている。紅白戦や練習試合で快打を放つようになった。「信二さん(高橋2軍打撃コーチ)と、まず三振をしないところから始めて、年々三振は少なくなってきています。大きくフォームを変えるのではなく、左足を意識するなどいろんなパーツ(留意点)を組み合わせて、細かく修正しています」と明かす。
大卒の同学年が新人として入団してきた5年目。「いいバッターやいいピッチャーばかりですが、比較するのではなく自分がしっかりとやって、負けないようにしたい。定位置をつかむチャンスだと思っています」と前だけを見据える。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
