第6回WBCに村上&岡本は不在? 専門家危惧、カギ握る“国内組”「脅威になる」

侍ジャパン・井端弘和監督【写真:小林靖】
侍ジャパン・井端弘和監督【写真:小林靖】

中日・細川とともに現役ドラフト対象者で史上初めて侍に選出された

 野球日本代表「侍ジャパン」は1年後の来年3月、第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に大会連覇を懸けて臨む。前哨戦として今月5、6日に京セラドーム大阪で行われた「ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本vsオランダ」では、代表初選出の若手も躍動。現役時代にヤクルト、日本ハムなど4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が、来年のWBCでキーマンとなりそうな選手を指名する。まずは野手編──。

「オランダ戦2試合では、水谷(瞬外野手=日本ハム)が一番目立っていましたね」と野口氏が指摘する通りだ。中日・細川成也外野手とともに、現役ドラフトの対象となった選手では史上初めて代表に選出された水谷。5日の第1戦に「1番・DH」で出場すると、初回にいきなり2球目をバックスクリーン左の中堅席へ放り込む先制ソロ。翌6日の第2戦でも「3番・左翼」で5回に左前適時打を放った。

「“初サムライ”となれば、誰もが緊張するものです。ところが水谷は最初のスイングでホームランを放ち、全く動揺を感じさせなかった。大したものです」と野口氏。「そういうメンタルの図太さに加え、身体能力も高い。それに日本ハムでも、彼が打つとベンチが盛り上がります。勢いを持ってこられる選手は貴重ですよ」と目を細める。

 水谷はプロ入りから5年間はソフトバンクで1軍出場がなかったが、昨年現役ドラフトで移籍した途端ブレーク。97試合に出場し打率.287、9本塁打39打点をマークした成長株だ。セ・パ交流戦のMVPに輝くなど、短期決戦での強さもうかがわせた。

 2023年の前回WBCで日本の1番を担ったのは、日本人の母を持つラーズ・ヌートバー外野手(カージナルス)だったが、「来年のWBCでは水谷を1番に置いても面白そうですし、彼を下位に置いたら置いたで、相手にとって脅威になる。まず今年のレギュラーシーズンでレギュラーの座をがっち固めることが大前提ですが、WBCのメンバーに選ばれれば、キーマンになりそうな気がします」と野口氏は注目する。

アメリカにはジャッジ、ドミニカ共和国にはソト…相手もパワーアップへ

 井端弘和監督率いる侍ジャパンにとって、オランダ戦2試合は、長距離砲の発掘がテーマの1つだった。というのも、前回WBCで活躍したヤクルト・村上宗隆内野手、巨人・岡本和真内野手はいずれも来年、メジャー移籍の可能性が取り沙汰されている。メジャー1年目の3月には、新しいチームに慣れることやレギュラー確保へ向けてのアピールを優先し、WBC出場を避ける選手が多い。前回WBCにメジャー1年目で出場したレッドソックス・吉田正尚外野手は、むしろ例外的だったのだ。

 野口氏は「村上や岡本が来られない時の長距離砲候補として、水谷、細川、阪神・大山(悠輔内野手)、日本ハム・万波(中正外野手)らを試してみたかったのだと思います」と井端監督の意図を読む。その中で、大山は第2戦で左翼席へソロを放ち期待に応えた。

 仮に村上、岡本が不在の事態となっても、NPBの長距離砲が成長を遂げ、メジャー組のドジャース・大谷翔平投手、カブス・鈴木誠也外野手、吉田らとクリーンアップを形成することができれば、かなりの破壊力は発揮できそうだ。

 今年のオランダ戦2試合は5-0、9-0の圧勝だった。しかし、来年のWBCでもオランダの実力がこんなものだとは、思わない方がいい。

 野口氏は「今年のオランダは、ブレーブスのスター選手ジュリクソン・プロファー外野手の弟(ジュレミ・プロファー内野手)が3番を打って話題になっていましたが、来年のWBCでは兄の方が満を持して出場してくるかもしれない。となれば、かなり手ごわいでしょう。アメリカも昨年58本塁打のヤンキースのアーロン・ジャッジ(外野手)、ドミニカ共和国もメッツのフアン・ソト(外野手)が出場に前向きだそうですから、来年のWBCで優勝することは前回以上に難しくなると思います」と警鐘を鳴らす。

 並みいる強敵を返り討ちにするためにも、NPB組の長距離砲の成長が不可欠だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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