育成出身、逸材21歳が虎封じも…指揮官があえて突きつけた課題「いただけない」

育成選手出身で昨年6月に支配下登録を勝ち取った菅井信也投手
西武の4年目左腕・菅井信也投手は11日、本拠地ベルーナドームで行われた阪神とのオープン戦に先発し、5回無安打2四球無失点の快投。開幕ローテ入りへ大きく前進した。昨年まで3年間ファーム監督を務め、今年から1軍の指揮官に就任した西口文也監督が、手塩にかけて育ててきた秘蔵っ子である。
21歳の左腕は、最速147キロを計測したストレートを軸に、チェンジアップ、スライダー、カーブも駆使し凡打を重ねていった。初回と2回はパーフェクト。3回には先頭の小野寺暖外野手を、1球もストライクが入らないまま四球で歩かせたが、後続を断った。
4回には、先頭の中野拓夢内野手に対し、再び4球で四球を与えるも、1死後、4番の森下翔太外野手にチェンジアップを打たせて三ゴロ併殺に仕留めた。5回60球で降板後も、ブルペンで“おかわり”の投げ込みを行い、「(レギュラーシーズンなら)もっと投げられる球数だったので、今後を見据えて投げました」。先発ローテの一角を担う自覚をうかがわせた。
山形・山本学園高から2021年の育成ドラフト3位で西武入り。1年目から当時ファーム監督の西口監督の指導を受けてきた。昨年6月に支配下登録を勝ち取ると、すぐに1軍デビューを飾り、8試合(先発5試合)1勝2敗1ホールド、防御率5.25の数字を残した。
西口監督は「年々体つきがよくなり、球速も上がり、全体的によくなってきていると思います。開幕ローテ? 狙ってもらわないと困ります」と感慨深げに語る。実際、西武では昨年の新人王・武内夏暉投手が左肘の怪我で出遅れているだけに、同じ左腕の菅井に対する期待はなおさら高い。菅井自身も「去年も、先発の機会を何回かいただきましたが、投げ続けることはできなかった。今のうちにしっかりアピールして、開幕ローテ入りしたいです」と呼応した。
育成の是澤涼輔がスポット参戦でバッテリー
また、西口監督はこの日、育成選手の是澤涼輔捕手を1軍にスポット参戦させ、菅井とスタメンでバッテリーを組ませた。「菅井と是澤は、2軍で長くバッテリーを組んでいた。せっかくの機会なので、どうせなら組んだことがあって慣れた者同士で組ませたかった。本当は別の捕手で行こうかとも思ったのですが、結果的に大正解。ナイスリードでした」と満面に笑みを浮かべる。このあたりは、ファーム監督を3年間経験してきたからこその粋なはからいだ。
一方で、西口監督は「先頭打者への四球2つはいただけない」と菅井に課題を突きつけることも忘れなかった。菅井は「これまで、重心を軸足から前へ移動させるのが早すぎると感じていたので、きょうは投球フォームを修正して臨みました。最初はよかったのですが、途中からフォームがばらつき、球速が落ちてしまった。(2つの四球は)ばらつき始めたところでした」と反省。「今後は、そこが課題です」と率直に受け止めた。
山形県南陽市出身。東日本大震災発生時は小1で、記憶はおぼろげだというが、3・11に開幕ローテ入りへの階段を上がったことは、一種のめぐり合わせかもしれない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
