2000年代と激変した現代野球 元助っ人が驚愕「違う環境」、データ主義に“警鐘”も

鷹・球団OBのバンデンハーク氏&ズレータ氏が語る“助っ人”の未来
宮崎・生目の杜運動公園で行われたソフトバンクの春季キャンプ。臨時コーチとして練習を見守り、時には選手にアドバイスを送る、球団OBのリック・バンデンハーク氏とフリオ・ズレータ氏の姿があった。
年代は違えど、ともにソフトバンクの中心選手として活躍し、ファンからも愛された2人。引退後はどこで何をしているか、気になっているファンも多いだろう。今回は2人の現在について、そして野球を通じた国際交流やデータ野球に対する考えを聞いた。
バンデンハーク氏は現在、メジャーリーグのコンサルタントとして働きながら、自身のキャリアを生かして幅広く活動しているという。「ヨーロッパを周り、指導者へのコーチング指導や、ヨーロッパの選手のスカウトなどをしています。以前は、スカウトした選手を(MLBロンドンシリーズに先駆けて行われた)ヨーロッパの育成トーナメントに連れて行き、そのトーナメントはMLBのショーケースにもなりました。また、母国・オランダの企業に対してスポーツに関する講演や、野球のクリニックを実施したりしています」。
一方のズレータ氏は、引退後にフロリダのフォートマイヤーズに野球施設を構えたそうだが、すでに売却しており、現在は主に不動産投資を行っているという。さらに「12歳になる子どもが野球をしているので、彼の練習を手伝いながら、学校や野球アカデミーで講演をしています」と、自身のキャリアをもとにした講演会も積極的に行っていることを明かした。
日本でプレーしていた年代や現在の生活拠点、そして生業も異なる彼らだが、今回は“若手外国人選手のサポートと育成”を主な目的とし、ともに臨時コーチとして春季キャンプに招へいされた。
「野球を通じて交流し、尊重し合えることはユニークであり、とても重要なこと」
若手外国人選手にとって、日本のプレースタイルや文化に順応することは、そう簡単なことではないはず。そのため、長い間日本でプレーし、今もなおファンの記憶に残る結果を残した、経験豊富な彼らからのアドバイスや指導は、貴重であり、有意義なものに違いないだろう。こうした形で、国際交流が行われていることについて「このような国際交流ができることが、野球の素晴らしさの1つだと思います」とバンデンハーク氏は語る。
「ホークスには日本人選手だけでなく、アメリカ人選手、台湾人選手、キューバ人選手、ドミニカ人選手、メキシコ人選手、そしてパナマ出身のズレータさんや、オランダ出身の私がいます。それぞれ独自の文化がある中で、野球を通じて交流し、尊重し合えることはユニークであり、とても重要なことだと思います」
ズレータ氏も「現在、多くの国にとって日本野球の存在が大きくなっている中で、今ここにいられることをとてもうれしく思います」と顔をほころばせ、引退から長い年月が経った今、臨時コーチとして、自身の経験をチームに還元できることに充実感を覚えている様子だった。
近年、プロ野球界ではデータの収集とその活用が鍵になっている。2人の現役時代と比較すると、取り巻く環境が大きく変わっているはずだが、彼らはデータ活用と野球界の未来についてどのように考えているのだろうか。
バンデンハーク氏は「私たちがプレーしていた頃とだいぶ違う環境であることは間違いないです。データから得られる情報は多いので、(データの活用は)とても良いことだと思います」とうなずきながらも「しかし、データを推進するあまり、選手の考え方がデータだけに集中してしまうことは問題です。うまくバランスを取ること、これが大切だと思います」と、選手の特性や感覚的な部分など、データでは測れない要素もあるため、データに捉われ過ぎないことが重要であることを説いた。
バンデンハーク氏「きっと、ホークスはチャンピオンになれると思います!」
これには「バンディが話した通り、バランスが重要」とズレータ氏も賛同。「データを重視しすぎると、自分のことがわからなくなってしまう時があるので、まずは自分自身についてしっかりと知っておく必要があると思います。データの全てが選手のためになるというわけではないので、“センスとIQ”が大事です」と、自身の考えを展開した。
2人は共通して、スキルアップにおいてデータは重要な要素だが、必ずしもポジティブな側面ばかりではないため、データに縛られすぎないように注意すべきであることを強調した。
最後に、日本のファンに向けて一言お願いすると「今年のホークスが楽しみですし、たくさんのファンの皆さんが応援に来てくれることを願っています」とバンデンハーク氏。続けて「きっと、ホークスはチャンピオンになれると思います!」とチームに期待を寄せた。
また、23日に開催される「SoftBank HAWKS 20th ANNIVERSARY SPECIAL MATCH」に出場予定のズレータ氏は、「ファンの皆さんには福岡に足を運んでいただき、私たちのプレーを見て楽しんでほしいです。素晴らしい時間になることを願っています。頑張ります!」と、久々の日本でのプレーを心待ちにしている様子。当時のファンにはおなじみの「パナマ運河」のホームランパフォーマンスについては、「それもやらないとね!」と力強く意気込んだ。
(「パ・リーグ インサイト」後藤万結子)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)