DeNAの二刀流が「中途半端ではいけない」 19歳が実感…1軍“デビュー”で見えた壁

広島林に“逆方向”へ2ラン被弾「いいとこにいったと思った」
いまNPBに“ネクスト大谷”といえる可能性を持つ選手がいるとすれば、この男だろう。DeNAの弱冠19歳の二刀流・武田陸玖外野手は11日と12日、本拠地・横浜スタジアムで行われた広島とのオープン戦2試合に、2軍から呼ばれスポット参戦。11日には右翼手として途中出場し1打数無安打、翌12日は投手として1回2失点だったが、左投左打の二刀流は底知れないポテンシャルを垣間見せた。
初めて1軍本拠地のマウンドに立った12日。武田は「“ハマスタ”に到着する前から緊張していましたが、いざマウンドに立つと、緊張よりワクワクの方が大きくて、楽しもうという気持ちになれました」と振り返った。「相手の応援歌をしっかり聞けましたし、結構余裕があったかなと思います」と言ってのける。この図太い神経が最大の武器かもしれない。
2-2の同点で迎えた8回に登場すると、いきなり先頭の左打者・韮澤雄也内野手をカウント2-2から、外角の142キロ速球で空振り三振に仕留めて見せた。しかし続く中村健人外野手を四球で歩かせる。次打者の中村奨成外野手を右飛に打ち取ったものの、その打席中、一塁へ牽制球を投じた瞬間、一塁走者の中村健にスタートを切られ、二塁を奪われてしまった(記録は盗塁)。そして左打者の林晃汰内野手に外角低めの142キロのストレートを、“逆方向”の左翼席へ放り込まれ2点を失ったのだった。
「投げた瞬間は、いいところに行ったと思ったのですが、あとで映像を見たら、ちょっと甘かった。ちょっと甘いだけでヒット、ホームランにされると勉強することができたので、今後に生かしていきたいと思います」。手厳しく1軍の洗礼を浴びた格好だ。
1回21球、1安打1奪三振1四球1失点で敗戦投手となった武田。最速144キロを計測したストレートの他、カーブ、スライダーを投げ、チェンジアップは封印した。ベンチに戻ると、三浦大輔監督から直々に声を掛けられ、最後は左肩をポン、ポンと叩かれた。武田は「『どうだった?楽しかったか?』と聞かれたので、『楽しかったです』と答えました。『全部プラスにとらえて、これから頑張って』と言っていただきました」と明かした。
打っては遊ゴロ「予想以上に球が凄くて振り出せなかった」
一方、三浦監督は「真っすぐに切れがあって、空振り三振も取れた。将来が楽しみだな、というボールを投げていたと思います。いきなり全てがうまくいくわけもなく、今後の課題にも、財産にもなったと思います」と目を細めた。
前日の11日には、6回から右翼守備に就き、8回の先頭打者として広島の中継ぎ左腕・塹江敦哉投手と対戦。初球の149キロのストレートを見送った後、2球目のスライダーを打ち遊ゴロに倒れた。こちらでも「初球から振りにいこうと思っていたのですが、予想以上に球が凄くて振り出せなかった。心残りというか、決めたことをできなかったのは悔しかったです」と反省が残った。
山形中央高時代には、投手として最速149キロ、打者として通算31本塁打をマークした。2023年ドラフト3位で入団し、1年目の昨年はイースタン・リーグで打者として4試合6打数1安打(打率.167)。投手としては登板なしに終わった。秋に台湾で開催された「アジアウインターベースボール」に参加し、本格的に二刀流に取り組み始めた。今年のキャンプは終始2軍だったが、ここにきて1軍への“顔見せ”としては十分なインパクトを残したと言えるだろう。
投打とも、まだまだ発展途上である。「登板前日に1500スイングした時には、翌日に体が張って、いつものようには投げられませんでした。どれくらいまで大丈夫なのか、自分で考えていかないといけませんね」と苦笑している段階だ。
高卒1年目に日本ハムの1軍で、打者として77試合出場、打率.238、3本塁打20打点、投手としても13試合3勝0敗、防御率4.23をマークしていたドジャース・大谷翔平投手とは、現時点では比べ物にならない。それでも武田の178センチ、78キロのがっちりしたボディは、いつか大谷に匹敵する大物になるのではないかという、そこはかとない予感を抱かせる。
「どちらかが良くても、どちらかが中途半端ではいけないと思います。やるなら、どっちもトップレベルを目指してやっていきたいと、改めて思いました」。二刀流としての覚悟を強調した。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
