大谷翔平の一発に表れた「2.5cmの効果」 専門家が見た“ジャッジ超え”の可能性

昨年の34インチから35インチへ…長打力アップの期待も“諸刃の剣”
ドジャースの大谷翔平投手は15日、東京ドームで行われた巨人とのエキシビションマッチに「1番・DH」で出場し、3回無死二塁で迎えた第2打席に戸郷翔征投手から、右翼席中段へ2ランを放った。現役時代に通算2038安打を放ち、オリックスのコーチ時代には、日米殿堂入りのイチロー氏の成長を促したことで知られる野球評論家・新井宏昌氏は「大谷が昨年よりバットを1インチ(約2.5センチ)長くした効果が、早くも表れた一発だと思います」と指摘する。
さすがの千両役者ぶりである。4万2064人の観客、テレビなどを通して見守っていた日本中のファンの期待を、事もなげにかなえてみせた。初回は四球で出塁した大谷は第2打席で、戸郷が初球に投じた外角低めのカーブをとらえ、打った瞬間それとわかる打球で右翼席へ運んだ。
大谷は今年、バットの長さを昨年の34インチ(約86.4センチ)から35インチ(約88.9センチ)に伸ばしたと報じられている。新井氏は「確かにテレビの中継を見ていても、大谷のグリップからバットの先端までの長さが、昨年より長くなっていたように見えました。第2打席の本塁打は、バットを長くしていたからこそ、芯に近い所でとらえることができた。昨年までであれば、バットの先に当たりフェンスは越えていないと思います」と指摘した。
バットを長くすれば、遠心力が増して飛距離アップが期待できるかわりに、操作は難しくなる。新井氏は「大谷は(エンゼルス時代の)一昨年も開幕前、それまでの33.5インチから34.5インチに伸ばしたと聞いています。しかし、速い球に振り遅れることが多かったため、シーズン中に34インチへと短くしたそうです」。その結果、後半に本塁打を伸ばし、44発で初の本塁打王を獲得することになる。
一昨年のシーズン中に試行錯誤があったように、バットを長くするのは“諸刃の剣”だ。新井氏は「大谷が今年からバットを長くしたというとことから、使いこなせるだけの筋力、バットコントロールが今の自分にはあるという自信がうかがえます」と指摘。一方で「第1打席では戸郷の140キロ台のストレートを2球ファウルにしたあたりには、まだまだ向上の余地があるのではないでしょうか」とも見ている。
投手復帰も見込まれるシーズン「疲労度が増せば短めに戻すパターンも」
大谷は昨年、54本塁打&130打点でナ・リーグ2冠に輝いたが、ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手はア・リーグで大谷を上回る58本塁打&144打点をマークした。
新井氏は「昨年の時点でも、仮に大谷がヤンキースに所属し、ドジャースタジアムより右翼席までの距離が短いヤンキースタジアムを本拠地としていれば、ジャッジを上回る本塁打を打っていた可能性はあると思います」とした上で、「長いバットをシーズンを通して使いこなすことができれば、今年は60発以上でジャッジを上回るかもしれませんね」と期待する。
一方で、「今年はシーズン中に投手復帰が見込まれていますから、投手を掛け持ちして疲労度が増し、一昨年同様に短めのバットに戻すパターンも考えられます」とも。
大きな夢が詰まった大谷のバット。わずが2.5センチの違いが、プロフェッショナルにとっては大違いなのだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
