投高打低でも変わらぬ打撃技術、逆風で自己ベストも… パ6球団の「チーム内首位打者」

昨季のパ・リーグの3割打者は近藤健介のみだった
2024年のパ・リーグでは、規定打席に到達して打率.300を超えた選手がソフトバンクの近藤健介外野手ただ一人という異例の事態となった。投高打低の環境にあって打率を下げた選手も少なくないだけに、一定以上の打率を残した選手の存在価値は例年以上に高まりつつある。今回は、昨季パ・リーグ各球団における「チーム内首位打者」に輝いた選手たちの顔ぶれを紹介。打者にとって厳しい環境を克服してチームの打線をけん引した選手たちの活躍をあらためて振り返るとともに、今季のさらなる活躍にも期待を寄せたい。
◯郡司裕也捕手(日本ハム)
2019年ドラフト4位で中日に入団。中日での3シーズン半では1軍定着を果たせなかったが、2023年途中の日本ハムへのトレード移籍をきっかけに開花。本職の捕手に加えて内外野の複数ポジションをこなしながら、打率.254と一定の数字を残してみせた。昨季も持ち前のユーティリティ性を活かし、三塁手で99試合、一塁手で21試合、外野手で9試合、捕手で6試合に出場。チームトップの打率.256に加えて12本塁打とパンチ力も示し、8月1日には劇的なサヨナラ本塁打を放つなど大いに存在感を発揮。主力選手の一人として、チームの2位躍進にも大きく貢献を果たした。
◯辰己涼介外野手(楽天)
2018年ドラフト1位で楽天に入団。プロ入りから6年連続で100試合以上に出場し、俊足と強肩を活かしたハイレベルな外野守備を活かしてチームを支える存在となった。キャリアの初期には打撃を課題としていたが、2022年以降は3年連続で打率.260以上と着実な向上を示している。昨季はキャリア初の全試合出場を果たし、リーグ2位の打率.294に加えてリーグトップの158安打を放ち、初めての打撃タイトルとなる最多安打を受賞。外野手として自身初のベストナインと4年連続のゴールデングラブ賞にも輝き、名実ともにパ・リーグを代表する外野手へと成長を遂げた。
◯源田壮亮内野手(西武)
2016年ドラフト3位で西武に入団。プロ1年目の2017年に全試合フルイニング出場を達成し、新人王に輝く見事な活躍を披露。その後も球界最高クラスの遊撃守備と2021年には盗塁王にも輝いた脚力を活かし、絶対的な主力として2018年からのリーグ連覇にも大きく貢献した。年間打率.300を上回ったシーズンこそないものの、コンスタントに打率.270前後を記録する安定した打撃も特徴の一つ。球界全体で投高打低の傾向が強まる近年においても、大きく数字を落とすことなく一定の成績を残し続けており、昨季は全試合に出場したうえでチームトップの打率.264を記録している。
森友哉は規定打席に到達してリーグ3位の打率.281、同2位の出塁率.368
◯佐藤都志也捕手(ロッテ)
2019年ドラフト2位でロッテに入団。プロ3年目の2022年から3年連続で100試合以上に出場し、強肩とパンチ力のある打撃を活かして主力捕手の一人として奮闘。その一方で、打率は4年続けて.230以下と、確実性の面ではやや苦戦を強いられていた。しかし昨季は開幕からハイアベレージを残し、自身初選出となったオールスターでは第2戦のMVPを受賞する大活躍。プロ5年目にしてキャリア初の規定打席到達を果たし、リーグ4位の打率.278を記録。捕手部門で自身初のベストナインにも輝くなど、「打てる捕手」としてブレークを果たす充実のシーズンを送った。
◯森友哉捕手(オリックス)
2013年ドラフト1位で西武に入団。2019年には捕手としては野村克也氏以来54年ぶりとなるパ・リーグ首位打者を受賞し、MVPにも輝く活躍でリーグ連覇の立役者となった。2023年にオリックスへ移籍。同年には打率.293、OPS.893という好成績でリーグ優勝に貢献した。昨季は故障の影響で117試合の出場にとどまったが、規定打席に到達してリーグ3位の打率.281、同2位の出塁率.368を記録。OPSもリーグ4位の.783と相対的にハイレベルな数字を記録しており、投高打低の環境の中でもリーグトップクラスの成績を残し続けている。
◯近藤健介外野手(ソフトバンク)
2011年ドラフト4位で日本ハムに入団。2017年から8年連続で打率.298以上を記録している卓越した打撃技術と、通算出塁率.418を誇る抜群の選球眼を武器に、リーグ屈指の安打製造機として活躍。ソフトバンクに移籍した2023年には本塁打と打点の2冠王に輝くなど、パワーの面でも著しい進化を遂げている。昨季も打率.314を記録してパ・リーグ唯一の3割打者に。自身4度目の最高出塁率、プロ13年目にして初戴冠となる首位打者、同じく自身初のリーグMVPと数多くのタイトルを受賞する圧倒的なシーズンを送り、チームがV奪還を果たす原動力の一人となった。
近藤、森、源田の3人が、投高打低の傾向が強まる前と同様の安定した成績を残している点は特筆すべき要素だ。その一方で、郡司、辰己、佐藤の3人はいずれも2024年に入ってから大きく成績を向上させており、打者にとっては逆風が吹く状況の中で自己ベストの数字を残してみせたことは注目に値しよう。今回取り上げた選手たちは2025年も安定した打撃を披露し、主力打者として各チームの打線を支える存在となるか。投手優位の環境にあって、打線の得点力を左右し、他のチームに対して明確な優位点を生み出す存在となり得る好打者たちの活躍に、今季はあらためて注目してみてはいかがだろうか。
(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)