大谷翔平が払拭した“懸念材料” 専門家が驚嘆…159キロ撃ちで見せた「進化著しい技術」

カブスとの開幕2連戦に巨人、阪神との対戦を合わせた4試合で12打数4安打2本塁打
ドジャースの大谷翔平投手は19日、東京ドームで行われたカブスとの今季開幕第2戦に「1番・DH」で出場し、5回に右中間へ今季1号ソロを放った。3打数1安打1打点2四球で、開幕2連勝に貢献。前日(18日)の第1戦と合わせると、今季打率.375(8打数3安打)、1本塁打1打点での今季スタートとなった。また、東京ドームでエキシビションマッチとして行われた阪神、巨人との対戦も合わせると、4試合で12打数4安打2本塁打3打点3四球。日本中のファンが熱狂する前で、大谷が実証したものとは何だったのか。
開幕第2戦、大谷は5-2とリードして迎えた5回1死走者なしの場面で、第3打席に立った。カウント2-2から、カブス2番手の右腕ネイト・ピアソン投手が真ん中低めに投じた159キロのストレートをジャストミート。飛球は右中間スタンド最前列の観客の手に当たりフィールドに落ちたが、判定は本塁打で、カブス側が求めたリプレー検証でも覆りはしなかった。
現役時代に通算2038安打を放ち、引退後も名コーチとしても鳴らした野球評論家・新井宏昌氏は、この今季1号が持つ意味は大きいと見る。「甘めのコースの球とはいえ、追い込まれたカウントで、160キロ近い速球を見事に打ち返しました。昨季よりも長いサイズのバットに切り替えて今季に臨んでいる大谷が、実際の試合で速い球を弾き返すことができたのは初めてです。本人もそこに手応えを感じていることでしょう」
前日の第1戦では、カーブ、スライダーをヒットにする一方、速球に対してはバットの振り出しのタイミングが遅れ、空振りしたり、打ち取られたりしていた。こうした傾向は、エキシビションマッチから続いていた。新井氏は「長いバットはしなる分、タイミングが遅れ気味になりがちです。もし試合で速い球に対応できないケースが続いていれば、果たしてこのまま長いバットでシーズンを過ごしていいのか、不安にもなったでしょう。それを開幕2戦目に払拭できたことは大きいと思います」と指摘。「今後は試合での使い慣れもしていくでしょう。この本塁打でますます、バットのサイズを変えたことが今季成績にいい影響を与えそうです」と予測した。
巨人戸郷のカーブを右翼席中段に運んだ1発に如実に表れていた
初回先頭の第1打席でも、先発左腕ジャスティン・スティール投手の、真ん中高めに浮いた147キロの速球を“逆方向”の左翼フェンス際まで飛ばしていた(左飛)。「左投手の球を左方向へ運ぶ打ち方は、昨季までと全く同じ形でした。多少こするような打ち方になってしまったせいか、スタンドまでは届きませんでしたが、この打席でも長いバットを違和感なく振れていました」と頷く。
一方で、「もともと飛ばすパワーにかけては抜群だった大谷ですが、メジャー移籍後、年々著しく向上しているのが、ボールをとらえる技術です。最近は時おり変化球にタイミングを外されながらも、下半身を使って巧く拾ったり、片手でボールをとらえようとしたりと、粘っこい打撃を見せてます」とも語る。「パワーと技の両方が如実に表れたのが、巨人の戸郷(翔征投手)から打った本塁打ではないでしょうか」。15日のエキシビションマッチで、戸郷が初球に投じた低めのカーブを右翼席中段まで運んだ1発を例に挙げた。
「いまの大谷は、非常に高いレベルで技とパワーのバランスが取れています。今季は、昨季取れそうで取れなかった3冠王の達成を見たいですね」と目を細める新井氏。昨季MLB史上初の50-50を達成し、もうこれより上はないというくらいの成績を残しながら、まだ進化を続けているというのだから空恐ろしい。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
