「空振り祭り」の“自虐”も…都狛江の女子マネジャーがノックで変える公立強豪野球部

JCOMで東京応援番組MC・豊嶋彬氏が迫る「令和の高校野球」第2弾は都狛江
都狛江の取材レポートの1本目でもレポートしましたが、女子マネジャーがノックを打つことが同校の注目ポイント。マネジャー4名にインタビュー。野球部への想いを聞きました。彼女たちのほとんどは最初から「野球部のマネジャーになりたい」という思いを持っていました。しかし、全員が口を揃えて「まさか自分たちがノックを打つことになるとは想像していなかった」と驚いていました。
初めてバットを持った時の感想は「本当に重かった」「野球部員はこんなものを振っているのか」とびっくり。毎回、筋肉痛になり、バットを握る手にはマメもできたとか。最初は「空振り祭り」と自嘲気味に話していましたが、回数を重ねるごとに上達し、今では選手から「今の打球いいね」と褒められる瞬間もあるそうです。
新2年生の岡本マネジャーは少年野球は経験があるものの、ノックの難しさを実感していました。野球未経験のマネジャーにとって、バットを片手で持った状態から振り始めるノックの技術習得は大変だったそうです。コーチや先生方のノックは打球に強さがありますが、マネジャーのノックは強さがない分、選手にとって「正確な捕球の練習になる」と教わっているとのこと。マネジャーたちの間では、落合さんのノックが「一番上手い」という評価で、「体幹がしっかりしている」「安定感がある」と言われていました。
マネジャーたちはノックを打つことで選手の成長を実感しています。「入ってきたばかりの1年生が最初はポロポロしていたのが、自分が打った打球をしっかり捕るようになるのを見ると成長を感じる」。また「この選手は本当に上手い」という技術の高さも、練習に参加していなければ気づけない点だそうです。マネジャーの役割はノックだけではありません。練習試合の日は朝4時台に起きることもあり、試合のアナウンスも担当するんです。
アナウンスは交代選手が多い時など混乱することもありますが「いい経験になっている」と前向き。洗濯も大変だけど「今後の人生に向けてのいい勉強になっている」と目を輝かせていました。そんなマネジャーたちに夏の大会を楽しみにしているか聞いたら、意外にも「夏は早く来ないでほしい」と答えたんです。「野球部のマネジャーでいる今の時間が楽しいし、とても大事。終わってほしくない」と今にも涙を流しそうでした。
大会ではベンチに記録員として入るのは最高学年のマネジャーたちで、順番に回ってくるそうです。「最後の試合になってしまう瞬間にベンチにいたいかどうか」という質問には明確な答えは出ませんでした。「最後まできっちり勝てるとは想像できない」と、その瞬間をベンチで迎えるか、スタンドで他の部員と一緒に応援するか、悩む様子が印象的でした。どちらの選択をしても「全うしてほしい」という思いは同じです。
「今から想像しても泣けるくらい一生懸命にやっている」という言葉からは、彼女たちの野球部への思いの深さが伝わってきました。西村昌弘監督の話にもあったように、マネジャーたちはそれぞれが役割を与えられ、それを楽しみながら勉強し、貴重な経験を積んでいるんですね。ノックを打ち続けてきたマネジャーたちが最終学年の夏にどんな光景を目にするのか、今からとても楽しみです。
【筆者プロフィール】
○豊嶋 彬(とよしまあきら)1983年7月16日生まれ。フリーアナウンサー、スポーツMC。2016年から高校野球の取材活動を始め、JCOMの「夏の高校野球東西東京大会ダイジェスト」のMCを務めている。高校野球への深い造詣と柔らかな語り口を踏まえた取材・実況が評価されている。スポーツMCとしての活動のほか、テレビ番組MCなど幅広く活動中。Xのアカウントは「@toyoshimaakira」、インスタグラムは「@toyoshimaakira」。
(豊嶋彬 / Akira Toyoshima)
