5月2度目の抹消で「諦めるときが来た」 よぎった即引退…妻に伝えた名古屋の夜

梶谷隆幸氏は出場6試合に終わった2024年限りで現役を引退した
2020年オフに国内フリーエージェント(FA)権を行使してDeNAから巨人に移籍した梶谷隆幸氏は、2024年限りで現役を引退した。古傷の左膝はいっこうに治らず、同年5月上旬に2度目の出場選手登録抹消となると「諦めるときが来た」と引退を決意。すぐにチームを去る意向だったが、妻の言葉で「切れた気持ちを縫い合わせた」と、シーズン終了まで巨人の一員として過ごした。
入団4年目、2024年3月29日の開幕戦ではピンチから救うスーパー美技&貴重な2ランで阿部慎之助新監督の初勝利に貢献した。しかし、古傷の左膝の状態が思わしくなく4月3日に登録抹消。5月3日に1軍復帰し3試合に出場したが、続く遠征先の名古屋で再び痛め、同7日に抹消となった。
「これ以上耐えられないと思いました。もう何回も同じ膝で離脱を繰り返した。1か月くらいかけて戻っても2試合とか3試合しかもっていないわけじゃないですか。もう体が無理なんだろうなと。引き際、諦めるときが来たという感覚です。周りの人たちも振り回しちゃうし……」
チームを離れ、宿舎に戻ると妻に電話した。「もう辞める。チームに迷惑かけちゃうので、その後のお給料も全部いらないので今すぐ辞める。6月からお金入らないけどいい?」。気持ちは限界に達していた。
1軍が試合を行っているはずの時間に梶谷氏から着信があったことで、夫人も痛みが再発しての離脱を察していたという。「伝えたときには“だろうな”って感じでした。でも『契約もあるし今年1年間、最後まで頑張ってみたら』と。それで切れた気持ちをちょっと縫い合わせました。でも8、9月ぐらいには今年で辞めるからっていうのは言いました。きっとクビになると思うし、クビじゃなくても辞める、と」。
巨人での最終年は6試合の出場で打率.188、1本塁打、2打点だった。「むしろ6試合も出ていたんですね」。盗塁はゼロ。DeNA時代から「蒼い韋駄天」の異名でスピードを武器としていた男が、スパイクを脱ぐことを決めた。
(湯浅大 / Dai Yuasa)

