先発挑戦は「間違っていなかった」 結果出ず救援再転向も…DeNA伊勢大夢の胸の内

昨オフ先発転向を直訴、OP戦3試合計9回を5失点で開幕10日前に再び救援へ
DeNAの伊勢大夢投手は昨オフ先発転向を直訴し、オフからトレーニングに励んできた。2月の実戦からまっさらなマウンドに上がってきたが、開幕10日前に救援再転向が決まった。先発としてのアピールは実らず「悔しかった」と話すが、“新しい自分”を見つける貴重な時間にもなった。
チームのために、救援として腕を振る。そのことに迷いはない。しかし伊勢にとっての先発という挑戦は“失敗”に終わった。そっと胸中を吐き出した。
「薄々気付いてはいました、チーム事情を考えると仕方ないのかなって。でもそれ以前に、自分が打たれてそこに落ちちゃったのが一番悔しかったですね。ただこういう自分もあると見せられたと思う。チャレンジしたいと自分がした判断は間違っていなかったと思いますね。また挑戦したいなと、またやりたいなと思うポジションのひとつではありました」
昨季までのプロ5年間で計238試合に登板。そのうち先発はわずか1試合だった。2022年には71試合で防御率1.72、39ホールドを誇った“伊勢大明神”。オープン戦は3試合計9イニングで5失点(自責4)ながら先発の経験で得たものは多かった。
「投手にとって一番大事なことだなって、先発をやって思い出しました」
5回まで投げられたことは自信にもつながった。これまでは先発陣と話す機会もそこまでなかったが、会話を重ねていろいろな野球観にも触れた。そんな中で「リリーフはチームをカバーしたり勝たせてあげたいと思う。その考えは一回捨ててみようかなと。イチ野球人としての行動が勝利につながるんじゃないかと再認識できました」。決してチームを思わないわけではない。まずは自分のすべてを出すことがチームの勝利につながる。ある意味で落ち着いてしまっていた自分から、以前のような荒々しさへの欲も生まれた。
さらに「高校時代、コーチによく『何点入っても0-0の気持ちで投げろ』って言われていたんです。大差であろうが何であろうが、1点もあげないのが投手にとって一番大事なことだなって、先発をやって思い出しました」とうれしそうに笑った。
リリーフとして再出発したプロ6年目の今季、ここまで5試合で4ホールド、防御率3.86。「現状維持じゃ打たれるんです。これだけの試合数を投げていれば、それだけボールを見せているということですから。キャリアハイ(2022年)以降はずっと悩んでいます」と明かす。
しかしそれは決して深い悩みの中で彷徨っているわけではない。進化を遂げるための悩み。救援に“戻った”わけではなく、新しい伊勢をまた見せてくれるはずだ。
○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。2011年から北海道総局で日本ハムを担当。2014年から東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。
(町田利衣 / Rie Machida)

