4球団がゲーム差なしも… 巨人が混セから抜け出す“3つの兆し”「独走の可能性も」

巨人・阿部慎之助監督【写真:矢口亨】
巨人・阿部慎之助監督【写真:矢口亨】

大勢&マルティネス…盤石の救援陣がもたらす安心感

 セ・リーグは11日現在、上位4球団がゲーム差なし、全6球団が2ゲーム差内にひしめく混戦模様となっている。だが、抜け出す可能性を秘めているのは、昨季レギュラーシーズン覇者の巨人と見る専門家が多い。現役時代にヤクルト、楽天で外野手として活躍し、ゴールデン・グラブ賞に7度輝いた野球評論家・飯田哲也氏もその1人だ。

「今季の巨人は主砲の岡本(和真内野手)が好調な上、周りを固める(トレイ・)キャベッジ(外野手)、吉川(尚輝内野手)もよく打っている。昨季より点を取れる打線になっています」と飯田氏は指摘する。昨季はチーム防御率リーグトップ(2.49)の投手陣が、総得点4位(462得点)の打線をフォローする格好だった。今季の打線はリーグトップのチーム打率(.266=11日現在、以下同)を記録している。

「これで、坂本(勇人内野手)が調子を上げるか、もしくは開幕から戦列を離れている丸(佳浩外野手)が戻ってきて猛打を振るえば、独走する可能性もあります」と占う。

 実際のところ、今季の巨人は坂本が打率.074(27打数2安打)と不振。開幕投手の戸郷翔征投手が3戦白星なし、防御率11.12と打ち込まれるなど誤算もある。それでも、圧倒的な底力をうかがわせる兆しが見える。

「まず、8回に大勢(投手)、9回にライデル・マルティネス(投手)が控えていて、試合運びに『7回までにリードすれば勝ち』という余裕があります。打線も点を取れているので、先発投手は5回をメドに全力投球できる。たとえば1死満塁のピンチを迎えた時、前進守備で“1点もやれない”という態勢を敷くのではなく、1つずつ確実にアウトを取っていけばいいと考えられるのもプラスです。逆に相手打線には、早くリードしなければという焦りが生じているはずです」

 マルティネスは中日に在籍した昨季、60試合で43セーブ、防御率1.09。大勢も43試合で29セーブ、防御率0.88をマークした。今季の巨人には球界を代表するクローザーが2人いるようなもので、チーム全体に絶対的な安心感を与えている。

好調のキャベッジ、打率2位の甲斐拓也は全試合でスタメンマスク

 一方、好調な打線を牽引している1人が、新外国人のキャベッジだろう。12試合で打率.333、3本塁打8打点。オープン戦で打率.214と苦しんでいたのが嘘のようだ。飯田氏は「今のところ打撃に穴というほどの穴が見当たらず、どのコース、球種にも対応できている」と指摘。「開幕戦でポンポンポンと打てた(2ランを含む4打数3安打2打点)ことによって、勢いに乗れたことが大きい」と見る。

 ソフトバンクからFA移籍した甲斐拓也捕手も存在感を示している。開幕から全12試合にスタメン出場。守備力だけでなく、打撃でもリーグ2位の打率.378を叩き出している。

「巨人は阿部慎之助監督が捕手出身だけに、守備を優先して甲斐を獲得したのだと思います。これほどの打撃好調は“嬉しい誤算”でしょう」。昨季までソフトバンクに14年間在籍した甲斐は、ゴールデン・グラブ賞に7度輝いたが、打撃では2022年にシーズン打率.180、翌2023年も.202だった。「今季は追い込まれてから逆方向(ライト方向)へのヒットが出ていて、打撃の意識が変わってきたのかなと思います」と、32歳の甲斐の進歩を感じ取っている。

 巨人には打撃に定評のある大城卓三捕手、岸田行倫捕手も控えているが、もともと守備力重視で獲得した甲斐がこれほどの打棒を振るっている以上、出場機会は減りそうにない。「今後、甲斐の打撃の調子が落ちてきた時、阿部監督がどう判断するか。そこが巨人の浮沈に関わるポイントになるかもしれません」と予想する。新戦力が期待通りの実力を示し、リーグ連覇へ向けて確かな手応えをもたらしている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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