巨人へFA加入も「苦しみはあった」 移籍に後悔なしも…涙なき会見の裏側、妻からのお願い

引退会見に出席した巨人・梶谷隆幸氏【写真:松本洸】
引退会見に出席した巨人・梶谷隆幸氏【写真:松本洸】

梶谷隆幸氏は2024年シーズン限りで現役を引退した

 プロ選手として18年間プレーした梶谷隆幸氏は2024年10月23日に引退会見を行い、現役生活に別れを告げた。FAで移籍した巨人での4年間については、怪我にも泣かされ期待されるような成績を残せなかったことに「苦しみがあった」と素直な胸中を吐露した。

「自分の決断に悔いるタイプではないですし、移籍して最高によかったと思いました。素晴らしい仲間にも出会えた。苦しい思いもして、いろいろな感情を味わえて、人間的に成長できた4年間でした。ただ、成績としては2020年からは下り坂というか、自分でも思い描けなかった」

 4年契約で入団した巨人では初年の2021年は初安打を満塁弾で飾るなどインパクトを残したが腰痛の影響で61試合の出場に終わり、2022年は左膝を痛めて1軍出場機会はなし。2023年は102試合の出場で打率.275だったが、左膝の痛みは消えず、2024年の開幕戦では超美技などで勝利に貢献したが6試合に出場しただけだった。4年間で169試合、508打数140安打の打率.278、7本塁打、44打点、13盗塁。FAでの大型契約として入団した選手としては、周囲の期待に応えた数字とはいえなかった。

「そこの苦しみはありました。自分を獲ってもらって、高い給料をもらっているのに、これはしんどいなっていう状況でしたね。年俸500万円とかの高卒何年目の選手とは違う立場なので。まったく貢献できなかった。FAしたなら丸佳浩(2019年に広島から巨人へ移籍)ぐらいの成績を目指さないといけないんでしょうが、足元にも及ばないなっていうぐらいの成績でしたね」

 同年のクライマックスシリーズ(CS)ファイナルシリーズはくしくも古巣同士の対決。梶谷氏は東京ドームで観戦していた。「自分もグラウンドにいたら最高だったなと思いました。どっちも応援していましたけど、心境としてはジャイアンツですかね。その時点ではジャイアンツの一員だったので」。

 DeNAが突破に王手をかけていた第6戦、同点の9回に牧が決勝の適時打を放った。「あの瞬間、俺は明日、球団に引退を告げにいくんだなと思いました」。巨人の終戦を見届けてから10分後、ひとまず2軍マネジャーに電話し、引退を伝えた。その翌日に挨拶で球団事務所を訪れると「引退会見するから明日でいいか」。最後の“花道”が用意された。

引退会見前に妻から「すっごい笑顔でやってほしい」

「会見なんてやってもらえるとは思いませんでした。ものすごい配慮していただいた」。壇上の梶谷は涙をみせず、終始笑顔だった。会見前、妻に「涙がでてくるかもしれない」と伝えたところ「すっごい笑顔でやってほしい」と返ってきた。「ウチの嫁は面白くて、『この18年間が辛かったっていうのをあそこで見せて欲しくない。この舞台から降りるってことはどっちかっていったら素晴らしいことじゃん』って。そこで僕も気持ちが晴れやかになりました」。

 会見には同学年の坂本勇人内野手や菅野智之投手がサプライズで登場。さらに小林誠司、大城卓三両捕手、門脇誠内野手、長野久義、佐々木俊輔、浅野翔吾、重信慎之介、立岡宗一郎、オコエ瑠偉の6外野手も続々と駆けつけた。

「勇人は予想していましたけど、あんなに人が来てくれるとは思わなかった。シーズンが終わった翌々日ですからね。ありがたいですよ、本当に」。記録よりも記憶に残る選手は、仲間からも愛されていた。

(湯浅大 / Dai Yuasa)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY