出遅れた鷹、苦戦が続いた原因とは 「流れが読めていない」元コーチが分析する現状

ロッテ戦の指揮を執ったソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:イワモトアキト】
ロッテ戦の指揮を執ったソフトバンク・小久保裕紀監督【写真:イワモトアキト】

現役時代にGG賞7度、鷹コーチも5年間務めた飯田哲也氏

■ソフトバンク 5ー4 ロッテ(11日・ZOZOマリン)

 今年のパ・リーグは波乱含みだ。昨季独走でレギュラーシーズンを制したソフトバンクが一転、開幕3連敗スタートとなり、敵地ZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦に延長10回の末5-4で競り勝ち4連勝を飾ったが、11日現在で5勝6敗1分と黒星が先行している。昨季まで長年チームの正捕手を務め、野球日本代表「侍ジャパン」の常連でもある甲斐拓也捕手が、巨人へFA移籍したことが要因の1つなのか――。

「甲斐は総合的に守備力の高い捕手でしたが、特にワンバウンドの投球をしっかり止めるブロッキングの技術が素晴らしかった。たとえば、エースの有原(航平投手)もフォークを投げる際、思い切り腕を振ることができていたのもそのお陰です。今年の有原はフォークが決まっていない。そういう意味で、甲斐の存在が大きかったのかなと思います」。こう指摘するのは、現役時代に外野手としてゴールデン・グラブ賞に7度輝き、ソフトバンクでも5年間コーチを務めた経験を持つ野球評論家の飯田哲也氏だ。

 昨季最多勝の有原は、今季開幕戦で7回7失点、2度目の先発も4回途中6失点で連敗スタート。3度目の先発となった11日のロッテ戦は、6回まで1失点でしのいでいたが、7回2死走者なしから3連打で同点に追いつかれ、今季初白星を逃した。

 今季のソフトバンクは11日現在、12試合中8試合で海野隆司捕手、3試合で谷川原健太捕手、1試合で渡邉陸捕手がスタメンマスクをかぶっている。昨季登板した26試合全てで甲斐とバッテリーを組んだ有原は今季、2試合目まで谷川原、11日は海野が相手だった。

10日に今季1軍初昇格…33歳の嶺井が随所に光るプレーを見せた

 飯田氏は「海野、谷川原といった経験の少ない捕手は、甲斐に比べると、目の前の打者だけに集中しがちで、次の打者は誰かとか、ここは長打警戒でシングルヒットはOKとか、この打者を出塁させたら次に代打で出てくるのは誰かとか、試合の流れが読めていない気がします」とも見ている。

 もっとも、捕手は経験が物を言うポジションで、一人前のレギュラーを育てるには時間が必要といわれる。「逆に有原のような経験豊富な投手が、キャッチャーをリードしていく形がいいのではないか」と飯田氏。その他にも「コーチが捕手に『大事な場面ではベンチを見ろ』とか、『ここは四球で歩かせてもいいよ』と指示してあげるのもいい。また、“困った時のベテラン”ということで、嶺井(博希捕手)を使ってみてほしい気もします。若い捕手がベンチから嶺井のリードを見て、勉強になることもあると思います」と方策を提言する。

 プロ12年目・33歳の嶺井は、10日に今季初めて1軍昇格。途中出場した11日のロッテ戦では、1点ビハインドの8回の打席で同点のきっかけとなる右前打を放ち、守備でも8回に二盗を試みた代走・和田康士朗外野手を刺すなど、随所に光るプレーを見せた。

 ソフトバンクの現状は、「(リバン・)モイネロ(投手)以外の先発投手陣に安定感がない」と飯田氏。野手陣も栗原陵矢内野手が右脇腹を負傷し2軍調整中、近藤健介外野手も開幕3連戦後に腰痛で戦列を離れるなど、故障者が目立つ。課題は多いが、中でも正捕手の育成は、連覇を達成する上で避けて通れないポイントになりそうだ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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