田嶋大樹8年目のテーマ、全ての「過程を楽しむ」…2軍調整中に悟った心の在り方

オリックス・田嶋大樹、大胆なフォーム改造も
オリックスの田嶋大樹投手が、「過程を楽しむ」をテーマに、8年目のシーズンに臨んでいる。
「去年までは、結果、結果と自分の変な固定観念、型にはまった考え方をしていたのですが、過程を楽しむというのが(今年の)僕のやりたい野球なんですよ」。今季初勝利を挙げた後、大阪・舞洲で田嶋が目を輝かせた。
田嶋は佐野日大高(栃木)、JR東日本を経て2017年ドラフト1位で入団した左腕。プロ3年目から3年連続20試合以上に登板し、先発ローテーションを守ってきた。右打者の内角へのクロスファイヤーやスライダー、チェンジアップなどの緩急で打者を翻弄し、7年間の通算成績は42勝36敗。
「どれだけ練習を重ねても周りの人より劣っていると思ってしまうタイプ」と明かし、これまで自分と向き合いブレることなく愚直なまでに試行錯誤を繰り返してきた。それでも自信を持つことはできず、中嶋聡前監督が退任直前に「持っている力からすると、もったいない」と話したことを伝え聞いた際には「素質がわかっていないから自信がないので、僕の良い素質というのがどこなのか、聞きたかったですね。監督が言ってくれたら自信にもなったんですけどね」と真顔で残念がった。
打開するため、新たな試みにもチャレンジした。今年1月の自主トレ期間中にプロ野球やソフトボール、プロゴルファーらが師事するアスリートコンサルタント、鴻江寿治さん主宰のキャンプに参加。腕から始動する大胆なフォーム改造にも取り組んだ。
「もっと自分を信じて、自分のやりたい野球をやろう」
体調不良で開幕ローテを外れてしまったが、2軍で調整中にテーマを明確にすることもできた。「練習する過程、試合の過程、打たれた過程、抑えた過程、勝った過程、負けた過程。この過程をしっかりと楽しむということをファームの練習からしっかりとできるようになりました。ファームで楽しめるなら、上(1軍)に行っても楽しめるし、上に行ってもファームに落ちる恐怖っていうのはない。もちろん1軍でやらないと仕事がなくなっちゃうんですが、ファームでも楽しいし、野球は野球ですから。その過程を楽しむということを大切にしたいんです」と一気に思いを語った田嶋。
意識の変化を与えてくれたのは、周囲の人達の言葉だったという。「僕の周りの人と話をしていて『そろそろ、自分のやりたい野球をやってもいいよね』というような話になって」。岸田護監督からは、何度も「期待しているよ。頑張って」と声をかけてもらい、水本勝己ヘッドコーチや厚澤和幸投手コーチら指導者からは「成長するためにやっているんだから、頑張りなさい」「練習はタジ(田嶋)に任せるよ」という言葉をもらった。
「そういうのが、僕の中では結構、背中を押してもらえているんです。だから、もっと自分を信じて、自分のやりたい野球をやろうということを頭に入れ、今、実行しています」。結果にとらわれることなく、自分を信じてボールに魂を込める。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)



