甲子園V→防御率15点台 あがらない球審の手「きつかった」…プロで感じた“恐怖”

プロ1年目の元広島・今村猛氏【写真:産経新聞社】
プロ1年目の元広島・今村猛氏【写真:産経新聞社】

今村猛氏のプロ1年目は2登板で防御率15.75と苦しんだ

 デビュー戦は先発して2回5失点だった。2009年選抜大会優勝投手で、元広島右腕の今村猛氏はプロ1年目の2010年8月18日のヤクルト戦(マツダ)で1軍初登板を果たした。だが、味方のミスもあっていきなり満塁とされ、畠山和洋内野手に左翼席に叩き込まれた。「ホント気付いたら、って感じでした」。ルーキーイヤーは2登板で0勝1敗、防御率15.75の厳しい結果に終わった。とりわけプロの世界で戸惑ったのはストライクゾーンだったという。

 キャンプから1軍だった1年目の今村氏だが、オープン戦終盤のブルペン投球で肩甲骨付近を痛めて、再調整を余儀なくされた。「たぶん肉離れでした」。この怪我がなくても首脳陣の方針で2軍スタートの予定だったが「1年目からどうにか活躍したい」との思いから、2軍では少々痛くても、完治前から無理して投げていたそうだ。7月22日には出身地・長崎でのフレッシュオールスターに出場。ウエスタン・リーグの先発投手を務めて2回1失点だった。

「たまたま長崎だったんですよね」。2回にロッテ・細谷圭内野手にソロアーチを許したが「ああいう時ってあまり変化球を投げないし、ホームランか三振かくらいの感じだったので、打たれたことに関しては何も思っていませんでした。カープのユニホームを着て長崎で投げられたことだけで、ちょっと満足していたので……」と懐かしそうに話した。そして8月18日のヤクルト戦に先発で1軍デビューとなった。

 結果は2回5失点で敗戦投手。初回、先頭の青木宣親外野手は三飛に打ち取ったが、2番・田中浩康内野手の打球を二塁・東出輝裕内野手が捕れず(記録は右前打)出塁を許し、3番・飯原誉士のフライも一塁のジャスティン・ヒューバー内野手と東出が交錯してまたも処理できないという(記録は一塁失策)不運が続いた。4番のジョシュ・ホワイトセル内野手には四球を与えて、1死満塁。ここで畠山に左翼スタンドへ痛恨の一発を浴びた。

「畠山さんには満塁になって、やっぱりストライクが欲しいなとなってスライダーが甘く入ったのを打たれました。ホント気付いたらって感じでした。プロはこういう感じかと思いましたね」。2回にも1点を失い、その回で降板。味方守備に足を引っ張られたとはいえ、ほろ苦い初登板になった。「でも、しょうがないかくらいな。しかたないな、切り替えないとな、って思っていましたけどね」。首脳陣も次のチャンスを与えてくれた。

戸惑ったストライクゾーン「ボール2個分くらい違いました」

 8月25日の阪神戦(京セラドーム)に中6日で先発も、2回を3失点。3安打4四球1死球と終始苦しい投球だった。初回に打線が3点を挙げたが、その裏に2失点、2回にも1失点で追いつかれた。「駄目でした。高い京セラのマウンドに慣れてなかったのはありましたが、シンプルに今のままでは1軍で通用しないと感じました」。

 この阪神戦は同じ佐世保市出身の城島健司捕手との対決が注目された。今村氏は佐世保市立小佐々中2年時に、佐世保野球場で自主トレ中だった城島の野球教室に招待された。そこで市内中学生チームの投手として城島と対戦。脇腹に死球を与えて笑顔で追いかけられた過去があった。そんな尊敬する郷土の大先輩とプロでの“再戦“。初回2死から三ゴロに打ち取ったが、すでに2点を失っており、もはやそれを意識する余裕もなかった。

 翌8月26日に2軍落ち。今村氏の1年目シーズンはそのまま2登板で終了した。2軍では13登板で4勝4敗。「下でも防御率が(4.81で)よくなかったし、全然悪かったですね」。オープン戦中に故障し、治る前から無理して投げた影響も感じたという。「スピードもあまり出なかったですからね。やっぱり(万全ではない部分が)あったんでしょうね」と唇をかんだ。

 加えて「きつかった」というのが、プロ野球のストライクゾーンだ。「アマチュアとはボール2個分くらい違いましたからね。2個分甘くなるというか、内に入らなければいけないので、やっぱり怖さがありましたね」。高校時代にストライクと判定されていた球が、プロではボール判定。自然と四球が増えたし、ストライクを取りに行って痛打されるシーンも多かった。「まずは、そんな環境に慣れよう。そこからでした」。

 デビュー戦で満塁アーチを被弾して始まった今村氏のプロ生活。やはり甘くなかったが、へこたれることもなかった。こうした経験も生かして、2年目の2011年には初勝利、初ホールド、初セーブもマークする。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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